あなたとわたしの境界線を結んで恋と呼ぶのかもしれない

どこから話せばいいでしょう
このとある村の神様とその贄の娘が夫婦になるまでの物語を。

神様は、贄の娘の想い人であり夫となるはずだった人の姿で現れます。
亡き人が戻ってきた――のは「姿」だけで、冒涜のようにも感じられ、贄の娘、明里さんは受け入れられずにいます。でも「贄」であって村の弱い立場でもあり、とても苦しい状況に置かれます。
初めは、人の心の欠如した神様に「えこの人がヒーローであってる……?」までありましたが、でも贄への向き合い方これまでの過去、村で人を知り「明里さん」を知り心を通わせていく過程がとても丁寧に描かれて読み進める内すっかり二人の応援団と化していきました。
昔ながらの閉鎖的な村の在り方が「敵」なのかと思えば、それも光の当て方次第であり、はじめと最後でまるで見方が変わりました。
暗がりの中一面一面光をあてていき、朧な灯りから影が見えそして次第に強い明かりとなって気付けば全て照らされ温かい日の下にいる。確かにここに、これからが在る。そんな幸福な読後感。

「ヒーロー」「ヒロイン」の二人ともが初めから理想像としての型通りではありません。だからこそ、出会いが互いを変え――かたちにし、強く結ばれていく過程に惹きつけられました。
まぼろしの恋のゆくえを、ぜひ追っていただきたいです。

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