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異世界ファンタジーといえば今やライトノベルの人気ジャンルの筆頭に挙がりますが、かつては学園ラブコメの隆盛でファンタジー人気が下火になった時期がありました。そんな異世界ファンタジー人気の救世主となったのがMF文庫Jから刊行された故ヤマグチノボル先生の代表作『ゼロの使い魔』でした。異世界ファンタジーの世界観に学園ラブコメの要素を丸ごと持ってくるという逆転の発想で異世界ファンタジーに革命が起きたのです。『ハリー・ポッター』ブームの追い風もあって『魔法学園もの』は定番として確立しました。今回はそんな魔法学園を舞台にした作品を取り上げてみました。ちょうど四月で入学シーズンですね。中学高校大学へ進学された皆さん、ご入学おめでとうございます。魔法学園でなくても、新しい学校での出会いや学びは皆さんの人生に革命が起こることでしょう。皆さんの学園生活が実り多き日々になることを願っています。
異世界で勇者を育成する学園の悪役理事長ガイム・ランドレーに転生した主人公が、魔王の手先となって勇者に討たれる死亡ルートを回避するため、本気で世のため人のため理想の学園作りに従事する悪役転生ファンタジーです。
主人公のガイムは、エルピス学園を引き継いだ大貴族の放蕩息子。真っ当に生きるため自らも学園に入学して勉学に向き合うが、鍛えても鍛えてもレベルは上がらないし、剣術も魔術も進歩しない。
それもそのはず、ガイムは『異才』と呼ばれる特殊スキル体質だったから。貧弱なステータスと最底辺のレベルというハードモードながらも、特異なスキルを駆使して勇者となる少年セインや天才美少女フェリシアをはじめとする、勇者を目指す精鋭たちと渡り合うところが面白いんですよ。
実力を示し、理事長として学園改革に勤しむうちに悪評を払拭して周囲に認められていく光景が喜ばしいです。しかし魔王の魔の手は学園にまで伸びようとしていて……。はたして彼は魔王軍を相手に生き残れるのか。乞うご期待。
(「魔法学校へご入学」4選/文=愛咲優詩)
エルフの魔導士を育て親と師匠に持つ黒髪黒目の少女エランは、師匠の勧めに従って王都パルデアの魔導学園へと入学する。平穏な学園生活を夢見るエランだったが、実は師匠が世界最高の魔導士だったことが明らかになり、エランの周囲には喧騒が絶えない日常となっていく。
史上最強魔導士の弟子エランが巻き起こす魔法学園でのドタバタ騒動が愉快です。
師匠と二人で田舎暮らしをしていたエランは当たり前の常識や身分の格差も知らず、師匠が実は伝説の魔導士とも知らなかった世間知らず。そんな最強魔導士直伝の卓越した魔術の才能は魔導学園で注目を集めてしまいます。
同級生は、街の看板娘にダークエルフの少女、魔眼持ちの優等生、金髪縦ロールのお嬢様、黒髪黒目の自称転生者、ナルシストの筋肉男だったりと、それぞれ個性豊かでキャラが立ってますね。そんな級友たちと友情を育み、ぶつかり合い、交流を繰り広げてお互いに成長していく光景がまさに青春なんですよ。
エランが目指すのは師匠を超える魔導士になること。夢と希望と若さにあふれるエランたちの学園ドラマが眩しいです。
(「魔法学校へご入学」4選/文=愛咲優詩)
救世主として異世界オリエンスに召喚されてしまった神社の息子・八十神天従。日本の八百万の神々の力を使う八十神はその力を磨くため、国家魔術師の美女ジェットの推薦で国家魔術師を育成するリュケイオン魔法学園へ入学することに。
主人公の八十神は、神使の白兎イナバをはじめとした日本の神々の力を魔法として使うというのがユニークです。
しかしユニークすぎて、学園の中でも特異な才能が集まる「特異クラス」に編入させられてしまう。校舎の片隅に教室を構える「特異クラス」に集められたのは、落ちこぼれや問題児ばかり。
そんな中でもお人好しな八十神はイジメを受けている美少年フェエルや獣人の少女ミアを助けて友達になり、学園ライフを楽しんでいく姿が和むんですよね。
ただし同級生のなかには八十神のことを快く思わない不良たちもいて、あの手この手で八十神と友人を貶めようとして……。八十神は友人たちとの学園生活を守るために立ち上がる。異端の魔法使いが繰り広げる学園青春バトルファンタジーです。
(「魔法学校へご入学」4選/文=愛咲優詩)
魔女と呼ばれる不思議な力を持つ少女たちが集められた街『魔女特区』。特区の学園で高校教師をしている天野原天理は、生徒の魔女たちを見守り、あるいは指導し、彼女たちの明るい未来のために奔走する。魔女がいる現代で繰り広げる教師と女生徒の青春学園ファンタジーです。
思春期の少女たちに極稀に現れる特殊体質、それが『魔女』だ。魔女となった少女は、さまざまな異能を発現する。身体から炎を発したり、人や物を転移させたり、異性を誘惑したり、声や姿を別人に化けたりと、まさに魔法そのもの。
五人の魔女の生徒を受け持つ天理は、毎日のように彼女たちのやらかす事故や悪戯の後始末に振り回されて苦労が絶えない。
天理の言葉はまるで聞かない自由奔放な生徒たちだが、中身は普通の女の子。未熟な魔女たちは感情が不安定になると能力を暴走させて周囲に危害を及ぼす。いきすぎた暴走を力づくで止める『生徒指導』が必要になることもある。
そして魔女の力を悪用しようと企む者もいる。そうした悪党から銃を手に可愛い生徒を守るのも教師の役目だ。普段はだらしなくても、イザというときは守ってくれる。そんな天理だからこそ女生徒たちも心を開いていくんですよね。
教鞭と拳銃の二刀流で、ときには優しく生徒を守り、ときには厳しく生徒を叱る姿が大人としてカッコイイんです。
(「魔法学校へご入学」4選/文=愛咲優詩)