もう今年も一月半が経ちますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。僕は日々スマブラが強くなってばかりの日々を過ごしています。やっぱりそういう日常を過ごしていると、心のどこかで「これじゃダメだろう」という想いがふつふつとわきあがってきて、精神的によろしくないので、日々コツコツと本を読んだり文章を書いたりして、経験値をゆっくり少しずつでも積み重ねて精神面を安定させるのがよろしいかと。というわけで今回は僕の不安定な精神を安定させてくれた、いずれも楽しい4つの新作をご紹介します。

ピックアップ

圧巻の投稿量が生み出した答えとは!? 新人賞に応募したい人は必読!

  • ★★★ Excellent!!!

小説を書く人であればだれもが一度は考える新人賞への投稿。しかし、誰もが考えるということは当然ライバルも大量ということ。無数の投稿作の中で埋もれることなく、いかにして頭角を現すか? 
ここで普通なら一つの作品に集中してクオリティアップを図るなどと考えそうだが、この作者は全く異質の発想をした。

どうやっても選考には運の要素が絡むし、つまりは確率の問題である。だったら試行回数を増やせばいつかは当たる。つまり「数撃ちゃ当たる」と。

かくして作者による1年と九カ月の投稿戦線が幕を開けた。
ジャンルを問わずあらゆる新人賞に送り続け、その送った作品数はタイトルにもある通り圧巻の96本! ひと月に4本以上という超ハイペースで投稿している計算になる。

ここまでの本数を書くための速筆のメソッド、作品が落選したときのメンタルの保ち方、作品を書くためのアイデア捜しなど、作者がプロデビューに至るまでに行った具体的な執筆方法が紹介されている上に、選考でどのくらいまで進めば編集部から連絡が来るのか? 新人賞に使い回しはダメと言われるが実際はどうなのか? どういった賞に応募すれば作家として生き残りやすいのか? など投稿をする上で気になる疑問への回答も充実している。

現在ではWEB小説から直接デビューするケースも増えているが、やはり受賞デビューというのは魅力的。新人賞に投稿しようと考えている人は必読のエッセイです。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

JK工作員はド派手なミッションに立ち向かう

  • ★★★ Excellent!!!

文部科学省就学児童学内凶悪犯罪特別対策室、通称「がくはん」に所属する女子高生・真宮ひかりは、護衛任務のため成田空港を訪れる。だが、そこで彼女を待ち受けていたのは正体不明のパワードスーツだった。

ステルス機能を備えてどこからともなく現れて銃火器で周囲を血の海に変える正体不明のこの機械。
その正体は何者か? そしてひかりはこの殺人兵器から護衛対象の少年を守り通すことはできるのか?

普段は女子高生でありながら、プロの工作員として任務を冷静に遂行するひかりのキャラが非常に素敵。
追跡を避けるためにスマホを気軽に持ち歩かないというプロ意識の一方で、そのせいで友人からレスが遅いと言われてるのをちょっと気にしてたりするのが良い。
しかし本作でそれ以上に注目したいのが息もつかせぬアクションの連続だ。

冒頭から空港で派手に銃撃戦が繰り広げられたと思ったら、そのまま高速道路でのカーチェイスに突入し、その後も謎の尾行者と戦ったり、寮の屋上からダイブしたりと、あらゆるシチュエーションで様々なアクションが次々巻き起こる。
ハリウッド映画の派手なアクションが好きという方には是非お勧めです。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

被害者はVtuber、容疑者もVtuber、探偵もVtuber。

  • ★★★ Excellent!!!

最近はアニメ化もされて、今もっとも熱いジャンルといえるVtuber。日々新しい配信者が登場しては、作曲を行ったり、山を登ったり、ドヤ街を紹介したりと、このVtuber戦国時代を生き残るべく、それぞれの形で独自性を出そうとしているのだが、本作に登場するVtuberたちはなんと殺されてしまうのだ。

事件を起こすのは、配信中のVtuberの背後に突然現れる謎のピエロ。このピエロが現れてすぐ配信は途切れ、Vtuberの安否はそのままわからなくなってしまう。

当初はただの悪趣味ないたずらに思われ、視聴者たちはこれをデスBANと呼んで楽しんでいたのだが、似たような事件は他の配信でも発生し、さらに現実でもデスBANと呼応するように殺人事件が起き始める……。

被害者、容疑者、そして探偵役まで全員Vtuberという異色の本作品。設定は色物のようでありながら、この設定ならではの仕掛けが用意され、さらに読者への挑戦もついており、事件の内容はしっかり本格。

ちなみに本作の探偵役である、探偵Vtuber立花レンを始め、作中に登場するVtuberたちと同名のVtuberが皆実在するので、気になった人はチェックしてみると楽しいかも。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

AIの進歩がもたらした新たな将棋。それは将棋の終りか、新生か!?

  • ★★★ Excellent!!!

AIの発達によって、完璧な必勝法が発見された未来の将棋の世界。だが、人類は将棋を捨てきれず将棋の世界をさらに拡張することにした。

まずは将棋のマスを9×9から、49×49にまで拡大し、さらにABCという高さの概念も追加! さらにさらに棋士は特殊な属性のオーラ使うことで、駒にオーラをまとわせて従来とは違う駒の動きを実現!! さらにさらにさらにオーラをまとわせた駒を投げつけて対局者を直接攻撃することも可能!!! これもう将棋じゃないのでは……。

話が進むにつれて能力がやたらインフレしたり、味方キャラがあっさり死んだりと、もうただの能力バトルなのでは? と思ったりもするのだが、かつての伝説の棋士の故事に従って手の震えが覚醒のサインになっていたり、AIに詳しい棋士の名前がどこかで見た名前だったり、主人公の開発した『たれぞーシステム』が実際の将棋の戦法を彷彿とさせたりと、ところどころで現実の将棋にちなんだネタが出てくるから侮れない。
各話のラストに載っている『100年後の将棋について』という解説も妙にそれらしくて楽しい。やっぱ振り飛車はダメなのか……。

一話一話が短くバトルの連続でテンポよく進むし、バトルの内容も将棋がわからない人でも楽しめるように書かれているので、将棋に詳しくないという人も安心して読んでほしい!

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)