物語で2020年の夏を盛り上げよう!世界中が熱狂する“2020年の夏”をテーマに小説コンテストを開催!
1,085 作品
盲目のランナーの走りを、君は見たことがあるか!?
著者=明弓ヒロ
視覚障害者の短距離ランナーとして、東京パラリンピックを目指すサムと伴走者の俺。
だが、パラリンピックは延期となった。
神は乗り越えられる試練しか与えない。二人は、試練に打ち勝つか!
お盆の小遣いを巡る男たちのゲーム(六年目)
著者=酒井カサ
――お盆玉。
それは季節違いのお年玉。帰省した際に、親戚から貰えるお小遣い。
その支給を巡ってレースゲームで争うのだが、叔父さんの腕前はプロ級で……
勝負を続けて六年目。
それでも、お盆玉を得ようと奮闘する青年のお話。
ゲームをプレイするというのは単にその場限りの時間ではなく、時に没頭して我を忘れるほど夢中になったり、時に人と人が繋がって絆が生まれる等、様々な“広がり”を見せてくれます。
大賞作品はそんなゲームの一面を再認識させてくれました。
レースゲームにまつわる人間ドラマというところで、短い文章にもかかわらずストーリー性が秀逸、キレイにまとまっているなという印象を受けました。
たくさんの人に本作品を読んでもらい、あわよくば自分にとっての“広がり”を持つゲームについて思いふけてもらえたら幸いです。
“これマジでクソゲーだろ~”と思いながらも気付いたら長々とプレイしていた、ゲーマーにはしばしば発生する出来事です。
特別賞作品はそんな珍事(?)に対する独特な描写が散りばめられており、思わずニヤけてしまいます。
読後には“VR蚊やってみてえ”と思ったゲーマーさんは少なくないでしょう。
自分はかなりやってみたい・・・!
(板橋ザンギエフ)
ボクは誓う。希望を捨てずに生きていくことを……。
著者=たかなん
マヤ暦によれば二〇二〇年三月二〇日に人類が滅亡するだとか何だとか……
そんな終末論がボクたちの間でもまことしやかに囁かれたりしたのだけれど、
七月も終わろうというのに人類はいまだに生き残っている。
2020に復活した死にたい文豪×何としてでも遺作を書かせたい男の夏
著者=木古おうみ
クローンとAI技術を迎えた2020年。
大昔に逝去した文化人の遺伝子を培養して、クローンとして再誕させる、文化再生産機関に勤める俺の役目は、太宰治生誕百十一年記念の今夏、未完の遺作『グッド・バイ』を完結させることだ。
肝心の太宰治のクローン・仮称“ヨウゾー”は二度目の死を迎えたがっている。俺はとっとと仕事を終えて担当を外れたい。
だから、俺は生前この文豪が求めてやまなかった、ある“報酬”を探すことにした––––
死にたい天才作家の培養脳と、死なれる前に遺作を完成させたい男の、〆切を目前にした夏の駆け引き。
2019年に「カクヨム夏物語2020」の企画を立てたときに想定していたのとは、まったく違う形で特別になった2020年夏。SF・ミステリー部門では、この部門だからこそ見られる、世界を取り巻く不穏で深刻な状況を鋭い視点で切り取り、ひねりを利かせた作品が多数投稿されました。
中でも大賞の「パンデミックが収束したから、ボクたちは日常を取り戻すために必死なんです。」はコロナ後の世界を鮮やかに一回転させた作品でした。丁寧な描写によって、少年少女の閉塞感と爽やかさという矛盾した日常と、彼ら彼女らの暮らす変わってしまった世界の濃密な匂いや手触りまでもがリアルに伝わってきます。
「グッドバイ・ブンゴー、サマー・エンジン」「××××の流星」の2作品を特別賞としました。
前者はSFと文芸を融合した、後者は謎解きに正面から取り組んだ意欲作です。キャラクターが生き生きと描かれており、人を驚かせるたくらみに満ちている点を評価しました。
(河野 葉月)
「カクヨム2020夏物語」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
選評
新型コロナウイルスの流行に、東京オリンピック・パラリンピックの延期、緊急事態宣言と、昨年までは想像すらできなかった2020年を私達は迎えました。
その中での「カクヨム2020夏物語」でしたが、最終審査にはそんな世相を反映したような作品が多く集まりました。
大賞となった『シンクロ ~最高の伴走者~』は、東京パラリンピックを目指す盲目のランナーと伴走者の物語です。視覚障がいクラスのレースがスピード感と臨場感たっぷりに描かれ、「来年、パラリンピックを観戦しよう」と読者に思わせるパワーを持った作品でした。
特別賞の『どうしようもない家族になる』は、打って変わって、外出自粛中の男女が餃子によって距離を縮めていく様をコミカルに描いた作品。際立ったキャラクターとテンポよく進む会話は、コロナ禍の今だからこそ生み出されたものだと感じました。
同じく特別賞の『一番うるさい夏の日』は、自分の体に釘が刺さっていることに気づいた男子高校生と蝉の物語です。理不尽な夏を迎えた主人公の姿が情緒的に描かれ、読了後にとても前向きな気持ちになれる作品でした。
(額賀 澪)