概要
その夜、アレクシスの小屋に美しい少女が訪ねてきて、今朝助けてもらった蜘蛛だと名乗る。
少女はアレクシスにある申し出をして驚愕させ――。
ピュアで少しダークな、昔話風の異類婚姻譚です。
無理矢理すぎて恥ずかしいのですが、柴田恭太朗様の自主企画【三題噺 #124】「路」「素材」「香」にも参加させていただきました!
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!蜘蛛嫌いを蜘蛛好きにする、そんなパワーがある作品
人間に化けた動物が助けられたお礼をしに来る、という話は昔話でよくあるけど、本作は蜘蛛がお礼をしに来る話ですね。
皆さんは蜘蛛に対してどんなイメージを抱いているでしょうか?
人によっては怖いとか気持ち悪いとか、感じるかもしれませんね。しかし本作を読めば、その印象がいい方向に変わるのではないかと思います。
本作はまず、アレクシスという漁師が、水たまりで胡桃色の蜘蛛が溺れそうになっているところを発見するシーンから始まります。
蜘蛛を助けると、その日の夜、美しい女性がアレクシスの家を訪ねてきます。
彼女はクラウディアという名前で、なんとアレクシスが助けたあの蜘蛛が人間に化けた姿だという…続きを読む - ★★★ Excellent!!!蜘蛛という生き物に対する見方が変わるかもしれません。
人間によって助けられた生き物が人の姿となって恩返しに来る、という物語。形を変えながら世界中で愛される古典的で美しい物語ですが、本作では「蜘蛛」という誰しもが良い印象を持っているわけではない生き物をモチーフとしたのが珍しいでしょうか。
森で猟師として一人暮らすアレクシスという男性が、水たまりで溺れている小さな胡桃色の蜘蛛を助ける場面から物語は始まります。その場面では、多くの人が普段、蜘蛛に抱きがちな不気味な要素はなく、むしろとても可愛らしい描写をされているところに驚き、そこから早速、物語に引き込まれました。
蜘蛛はクラウディアと名乗る美しい乙女となって、アレクシスとともに仲睦まじく暮らし始…続きを読む - ★★★ Excellent!!!その愛は立ちはだかるいかなる障壁をも乗り越えて……
『――これはまだ、いたるところにあやめも分かぬほんものの闇があり、月はそのぶん皓々こうこうと光り輝き、岩のような熊から芥子粒けしつぶほどの蟲むしまでもが、ときに人語を解し摩訶不思議な力を持っていたころのお話です』
この冒頭の一文が一気に太古の『魔法が息づく世界』へと引き込みます。
また古き良き御伽噺のように紡がれていく文体と格調高き美しさのある描写によって読者は緩やかな流れに乗って心地よく古典の世界へと導かれていきます。
そして『動物の恩返し』という古典的なテーマをベースにしながらも、異種族間の愛というロマンスの要素を深く掘り下げていき、やがて主人公のクラウディアに容赦のない過酷な試練…続きを読む - ★★★ Excellent!!!もっと蜘蛛に優しくしてあげよう。そんなあたたかい気持ちになれる作品です
出だしから愛おしく思えて仕方なくなって、二人の幸せを願いたくなる。そんな物語でした。
主人公である猟師のアレクシスは森の水たまりで小さな蜘蛛が溺れそうになっているのを見つける。すぐに助けてやると嬉しそうな仕草をする蜘蛛。
その夜、助けた蜘蛛が美しい少女の姿になってアレクシスのもとに現れる。二人は一緒に暮らし始めて幸せな時間を送るようになるが……。
ヒロインであるクラウディアは、蜘蛛の変身した美少女。この設定がまずとても目を惹きました。
人間の美女に化ける蜘蛛というと、基本的「女郎蜘蛛」とかがベースの妖艶なイメージが強いものです。
対して、本編に登場するクラウディアはもとが…続きを読む