その愛は立ちはだかるいかなる障壁をも乗り越えて……

『――これはまだ、いたるところにあやめも分かぬほんものの闇があり、月はそのぶん皓々こうこうと光り輝き、岩のような熊から芥子粒けしつぶほどの蟲むしまでもが、ときに人語を解し摩訶不思議な力を持っていたころのお話です』

この冒頭の一文が一気に太古の『魔法が息づく世界』へと引き込みます。

また古き良き御伽噺のように紡がれていく文体と格調高き美しさのある描写によって読者は緩やかな流れに乗って心地よく古典の世界へと導かれていきます。

そして『動物の恩返し』という古典的なテーマをベースにしながらも、異種族間の愛というロマンスの要素を深く掘り下げていき、やがて主人公のクラウディアに容赦のない過酷な試練が訪れクライマックスを迎えます。

『本物の愛』を守りぬくためにはいったいどれほどまでの勇敢で強固な覚悟が必要なのか。

この作品はそれを雄弁に語る『種族を超えた愛と試練を描いたファンタジーロマンス』です。

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