【短編ホラー】旧再開発区における“資材化痕”の観察

旧再開発地区「区画B-47」で発見された異常な構造変異――
床に沈む棚、壁へ部分的に埋没した衣類、噛み砕かれたように潰れた空調ダクト、合金化しつつある床面、そして粉粒化した「何か」の小瓶。
本作は、これらの現象を都市伝説として語るのではなく、調査者個人の観察ログとして淡々と記録する形式をとっている。

血は流れず、生々しい肉体損壊もない。
代わりに残されているのは、砂・セメント粉・金属線・合金片――まるで人間が「建材へ再編成」されていく途中経過のような痕跡ばかりだ。

都市そのものが巨大な捕食機構として機能し、人間を“資材化”して取り込む。
その全容は明らかにならない。
ただし、調査者が最後に拾った小瓶は、持ち帰る途中で微かに音を立てたという。

静かに進む都市消化の記録。