怖いのは人の言葉と心★狂気のインタビューの連鎖に刺激される怖い物見たさ

先のレビューでも語られているとおり、インタビュー形式のみで物語が紡がれる異色な作品。
ある事件の真相に迫ろうとした犯人の友人が、関係者に一人ずつ話を聞きに行くというものです。

地の文がなく、さらに漫画ではないので、読者は登場人物(インタビュアーとインタビュイー)の発言だけを頼りにストーリーを辿っていく。
真実なのか嘘なのか分からない不安定な足場を目隠しして(登場人物の音声と捉えれば)聴覚のみで渡り歩いている心もとなさが読み手に恐怖を与えます。

またインタビュイーは稀代の少年犯罪者の関係者で、もともとか事件によって歪められたかはさておき、情緒不安定な曲者ばかり。(比較的まともなのは一人目くらい?)

地の文がない分、突然怒り狂ったり叫んだり、取り憑かれたように怯えたり、かと思いきや主人公(インタビュアー)の本心を衝いてきたり……。

そして揺れ動く感情は、あるとき途轍もない加速度をもって主人公を歪めていきます。

会話文だけで構成されている特性上、難解な表現はほぼ出てきませんが、それなのに、この物語独特のおどろおどろしい雰囲気、立体感、不安定な心情の変化を描写するのは、非常にすごいと思います。

読後感も何とも言えない。これは読んでみるしかないです。
物語の扱っている題材が題材だけに、残酷描写には多少の覚悟を要しますが、耐性がある方は是非味わってみて下さい。
怖いのに先が気になって、抜け出せなくなって行きます・・・。

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