生き生きと描かれる、死の都の営み

あまり知らない極北の異国、スオミ(フィンランド)の架空の都市インゴルヌカを舞台に繰り広げられる生者と死者たちの奇譚。

死者蘇生、不死者などはフィクションで特に珍しくもない題材ですが、この作品ではゾンビやワイトの設定がよく練られているだけでなく、彼らの存在が当たり前になった町の生活、独自の価値観が微に入り細を穿つ筆致で描かれており、その情景が目に浮かぶようです。

我々と同じ、死を経験していないふつうの人間(モータル)。
心を持たない死体人形とされるワイト。
崩れゆく生前の人格を引きずるマインドワイト。
蘇った死者として、亡霊として「生まれてきた」ゾンビ。

各々異なる生の在り方を持つ登場人物が交わり、織り成されるドラマは物悲しいですが、読めばきっと心に響くことと思います。







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