人が恐怖を感じるというのが、何らかの圧倒的理不尽に打ちのめされたときであるとするなら、この物語はまさしく恐怖を感じさせる物語である。
無駄のない短編で読みやすい文体軽快な文章は、火葬鳥の芯である恐怖を和らげるどころか、その柔軟な手触りによって私たちにより一層の恐怖を実感させるすべとして働く。
文章の端々から主人公の情念が否応なしに感じられ、読みすすめればより一層文章が心にからみつき私たちのホラーを読む原動力たる”好奇心”を刺激する。あっという間に、怖いどきどきうずうずと感情の激流を下り、ラストにたどり着く。一見したありきたりなようで深い視座の入り用になるラストは読後に奇妙な爽快感を残して幕を閉じる。
このような短編が4,5本あれば商業出版もあり得るのでは?と思わせる逸品でした。
最後に、レヴューをだ、である調にしたのは、ホラー好きならば是非読んでほしいからです。読みましょう。面白かったです。