走り抜けた物語に喝采を

【完】一文字では言葉足らず、彼の物語は重厚にして疾走感にあふれていた。
【かん】一言では舌足らず、彼の想いも願いも、語り尽くすには至らない。
だが、しかし。
強大な敵に立ち向かい、運命に導かれ世界そのものを打ち倒した彼が得た、小さな奇跡、小さな命。あまりに多くのモノを喪いながら世界を救った男への報酬としては、足りない――わけがない!
最初から、彼はそれだけを求めていた。この手に収まるだけの、小さく儚い幸せを。
彼の右手は愛犬に、彼の左手は愛する者に結ばれた。そして彼の物語は【完】という言葉で結ばれた。それが良い、それで良いのだ。

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