恋はメランコリーでミステリーでポエトリー

コペルニクス的大転回が作中の例示として語られていますが(発想の転換という意味で)、本作もまた、テーマ通りの「ねじ曲がった異質さ」を主張してやみません。
通常のティーンズ向けラブロマンスで踏まえるべき「純情」や「情熱」や「一途さ」と言ったものを、とことんひっくり返した「コペルニクス」的作品。
「打算」と「妥協」と「諦観」による、冷め切った恋。

10代のくせに結婚を見据えているだとか、折り合いを付けて無難に生きるべきだとか。
こまっしゃくれた屁理屈で粉飾した、背伸びしまくりのひねくれまくった人生観が、正統派ラブコメを期待して来た読者へ容赦なくカウンターブローを叩き込みます。

恋愛の定石を外しに外した、あえて逆の手を打ちまくるとどんな小説が完成するのか…という挑戦を受け取りました。

正直に言いますと、本作に登場する女性キャラクター、ほぼ全員が非常に鼻持ちなりません(笑)。
男子の心情などお構いなし、女子の都合だけで振り回しますから…(笑)。
近江先輩の結末なんて悲惨の一言ですからね、取り巻き女子どものワガママに引きずり回されてメランコリーになりました。可哀想すぎる…。

しかし。

話の本質はそこではなかった。
目を見張るべきは、そこに至る一連の謎解き。
主人公の個人情報をめぐる女子たちの思惑と犯人探しは、一種のミステリーを読んでいるような探究心をそそられます。

そこから再び怒涛の大転回。
一周回って「打算」が「純情」に成り代わる瞬間のカタルシスには舌を巻きました。
今までのフラストレーションを吹き飛ばす終盤の筆さばきは圧巻の一言です。
クリスマス、ジンクス、展望台、あらゆる舞台装置を集約させて主人公に純愛を決意させる、ポエトリーなあの台詞。

いやぁ、まんまと転げ回されました。
喜怒哀楽ぜんぶ詰まってます。お約束や定石ではない「本物の感情」に揺さぶられてみて下さい。

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