これほどまでに〝人間味〟に溢れた作品を、私は他に知りません。

『言葉を紡ぐ』という表現がありますが、この作品はその一つ上を行っています。文字という糸で編み物をしているような、そんな繊細さ、丁寧さ、そして真心を感じました。
 そうしてできた編み物は、時に寒さを防ぎ、また時に暑さを増長させます。
 この物語には優しい人が出てきます。残酷なほどに優しい人がたくさん出てくるのです。
 また、この物語には優しくない人も出てきます。環境のせいで優しくなれなかった人もいれば、あまりにも〝人間臭い〟人間も出てくるのです。
 優しい人も、
 優しくない人も、
 優しくしたいのにできない人も、
 優しくしたくないのにそうしてしまう人も、
 当たり前ですが、人間です。
 だから、この作品はどうしようもないほどに〝人間味〟に溢れているのです。
 人間の心を、その揺れ動きを、ありのままを、丹精を込めて書き上げているように、私には感じられました。

 みんなに知って欲しい、だけど、自分だけが知っていたい。
 そういう作品に覚えはありませんか?
 私にとって、この作品はその一つです。
 だから、気軽に読んで、とは言えません。
 是非、心して読んでください。

(第3章 3-1まで読んでのレビュー)

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