戦犯の孫

ふたぎ おっと

人物・地名・用語など

人物・地名・用語など

【登場人物】

●ブランカ

 主人公。十六歳。本名はクラウディア・ダールベルク。

 フィンベリー大陸戦争の首謀者マクシミリアン・ダールベルクの実孫。

 五年前に瀕死の状態をロマンに助けられ、正体を隠して児童施設に保護されている。

 プラチナブロンドの髪に薄萌葱色の瞳だったのが、今では真っ白なおかっぱ頭に深緑色の瞳。右頬から右上半身にかけて走る火傷の痕を、施設の子供たちに気持ち悪がられている。

 祖父が最期にくれた誕生日プレゼントのゴールドのブローチと薄萌葱色の手紙をこっそり隠し持っている。


●ヴォルフ・ノール

 ロマンの友人でブラッドローの軍人。アジェンダ人。

 実は生まれも育ちもヘルデンズだが、ダール政権中に『人種の美化活動』の犠牲となり、終戦間際まで収容所に入れられていた。それ故マクシミリアン・ダールベルクをひどく憎んでいる。

 鳶色の短髪に、薄鳶色の瞳。彫りの濃い顔立ちに、他の人より若干背が高い。

 フラウジュペイ語がかなり下手くそな一方、運動神経がかなりいい。

 やや強引なところもあるが、まっすぐな性格で人を見た目で判断しない。


●ロマン・クリシュトフ

 ダムブルク児童施設で働く心優しい青年講師。

 五年前にブランカを施設に連れてきた。施設で浮いているブランカをいつも励まし、特に彼女を気にかけている。

 柔らかいウェーブのかかった琥珀色の短髪と、空色の瞳。

 ヴォルフと友人関係だが、どこで知り合ったかは謎。


●レオナ・モナロール

 ダムブルク児童施設で働く食堂婦の娘。十九歳。

 母親と一緒に児童施設に身を寄せている。快活な施設の姉御で、ロマンと同じくブランカのことをよく気にかけ面倒見が良い。

 ショコラ色の髪に灰褐色の瞳。


●ギュンター・アメルハウザー

 五年前にブランカを森で焼き殺そうとした人物。

 オプシルナーヤの軍人。


●マクシミリアン・ダールベルク

 故人。ブランカの祖父。ヘルデンズの旧政権の総統。

 フィンベリー大陸戦争を引き起こし、ヘルデンズと支配国全土でダール体制という名の恐怖政治を行った。

 最終的に自殺。



◇第二章以降に登場する人たち◇

●ジルヴィア・ダールベルク

 ブランカの母。

 五年前に首を絞められて死んだと思われていたが、ロゼ市西地区ワーズ街銀杏通りで目撃される。しかしその後も行方不明。


●ブラウン少佐

 ヴォルフの上官。ブラッドローの軍人。


●ヤーツェク・ルトスワフスキ

 ロマンの過去を知る古い友人。

 フィンベリー大陸東側に多く見られるやや面長の輪郭と薄い顔立ちをしているが、どこの国の人かは謎。オプシルナーヤに対して強い不満を抱いている。

 無造作に伸ばした黒髪とみすぼらしい格好をしているが、ヘーゼルグリーン色の瞳は理知的な光を放っている。


●フィルマン・ランベール

 ロゼ市南地区に住む印刷会社の経営者。

 品良く切り揃えられたアプリコットの髪に、目鼻立ちの整った顔立ち。一見して若いが、今年で39才になる。

 愛想がいい男性で、家出したブランカを預かることになったが……。


●カミーユ・マルシャン

 フィルマンの一つ年下の従弟で、彼の補佐役。

 ブランカを預かっている間は彼女の家庭教師を務める。

 実家がロゼ市西地区ワーズ街銀杏通りにあり、そこでオーベルという名の犬を飼っている。

 オレンジと金色が交ざったような色合いの髪。抑揚を付けて話す癖がある。


●ニコラ・マルシャン

 ヴォルフやブラウン少佐の仕事を協力する警視正。今年で32才になる。

 実家がロゼ市西地区ワーズ街の銀杏通りにあるらしい。

 オレンジ色と金色が混ざったような色合いの髪に真面目そうな顔立ちが特徴。


●アロイス・テールマン

 ヘルネーの下町に住むヘルデンス人。

 テールマン保険事務所を経営する傍ら、オプシルナーヤ軍の東フィンベリー撤退を目論み、水面下で活動している。

 後ろで一つに結ばれた白髪交じりのアッシュの髪に、灰青色の瞳。人より高い声と童顔、低身長は、年齢よりもかなり幼く見える。

 訛りで話すのが特徴。

 戦中はヘルデンズ軍の軍医だった。


●ゼルマ・ヨアヒム

 ヘルネーに住むアジェンダ人女性でヴォルフの幼馴染み。

 戦中は別の大陸に亡命していた。

 ウェーブの掛かった肩までの艶やかな赤茶色の髪と同色の魅惑的な瞳。長身でグラマラスで巨乳など容貌は一際派手。

 ヘルネーの下町にある『女神の泉《ファウンテ・デ・ラ・ディオーサ》』の看板娘。

 バツ2で、かつてはヴォルフに恋していた。


●ティモ・ヨアヒム

 ゼルマの父。

 『女神の泉《ファウンテ・デ・ラ・ディオーサ》』の店主。

 悪い人ではないが、自分の物を汚されるのを酷く嫌う。



【国名・地名】

詳細な地図は(http://ncode.syosetu.com/n9628cm/1/)参照。


●フラウジュペイ共和国

 フィンベリー大陸の西側に位置する国。首都は『花の都』と名高いロゼ。

 戦中は被害にあったが、ロゼは攻撃されなかった。

 南にブランカたちが保護されているダムブルクがある。

 美食の国らしい。


●ヘルデンズ

 山岳を挟んでフラウジュペイの北東に位置する国。首都はノイマール。

 フィンベリー大陸戦争時はヘルデンズ帝国として悪名を馳せた。

 かつては科学大国として有名だったが、敗戦が故に国は困窮。

 今では中央の都市アルテハウスタットから東側はオプシルナーヤに掌握され、ノイマールは封鎖されている。特に東側ではオプシルナーヤの理不尽な政策が敷かれている。


●オプシルナーヤ帝国

 フィンベリー大陸北東に広い国土を持つ大国。

 旧王国はフィンベリー大陸戦争でヘルデンズを敗戦へ追いやった立役者。

 戦後に起こった市民革命で軍事主義の帝国へと変わり、フィンベリー大陸の東側諸国をオプシルナーヤの衛星国として掌握し、恐怖政治を行っている。

 ヘルデンズの吸収も目論んでいるが、フィンベリー大陸の覇権を狙って、ブラッドローや大陸西側諸国との軋轢が生じている。


●ブラッドロー連邦国

 フィンベリー大陸から海を隔てた向こう側に位置する大国(上図の左側に位置)。

 フィンベリー大陸戦争でオプシルナーヤと共にヘルデンズを敗戦へ追いやった英雄。戦後も大陸西側諸国を経済支援しているため、フィンベリー大陸で人気がある。急速に科学が発展し、経済成長が著しい。

 一方で、フィンベリー大陸戦争の戦後処理を巡ってオプシルナーヤと軋轢が生じていたり、国内では人種差別が深刻化していたりと、問題を抱える国でもある。


●故メルジェーク王国

 かつてヘルデンズの東隣にあった王国。

 フィンベリー大陸戦争中にヘルデンズ軍の度重なる侵攻を受けたため、終戦後に再起しないままにオプシルナーヤに吸収され消えてしまった。


●マグナストウ帝国

 フラウジュペイの北に隣接する強国。

 ブラッドローを開拓した。



【用語】

●フィンベリー大陸戦争

 十一年前から始まり、五年前に終わった大戦争。

 旧ヘルデンズ帝国の侵略戦争から始まり、フィンベリー大陸中が戦場になった。

 支配された国は恐怖政治を敷かれ、虐げられてきた。

 最終的に、旧ヘルデンズ帝国総統のマクシミリアン・ダールベルクの自殺により旧ダール政権が崩壊したことで終わった。


●ダール体制・ダール政権

 フィンベリー大陸戦争中にマクシミリアン・ダールベルクが支配国に敷いた独裁政治とその政治体制。これが敷かれた国では、ヘルデンズ人が優遇され、支配国の男性は従軍を強いられ、女性や子供は食糧難に悩まされながら重労働を課せられた。逆らった者は、即刻殺された。


●アジェンダ人

 古代神を信仰する人たちの蔑称。

 赤みがかった茶色から鳶色の髪、同色の瞳。彫りの深い顔立ち。それ以外の人より平均して身長が高い。

 信仰する神の種類は様々だが、一様にして同じ外見的特徴を持つ。

 古くから非アジェンダの人たちから差別されていた。

 フィンベリー大陸戦争後は姿を見なくなった。


●人種の美化活動・アジェンダ狩り

 ヘルデンズとヘルデンズの支配領国全域で実施されたアジェンダ人絶滅計画。

 アジェンダ人を人種として見なし、アジェンダの血が混ざる物なら老若男女一人残らず収容所へ送られ、殺された。

 これにより、フィンベリー大陸のアジェンダ人の三分の一がこの世から消えた。


●西フィンベリー系・東フィンベリー系

 フィンベリー大陸に主としてみられる人種の通称。

 フィンベリー大陸中央より西側によく見られる系統を西フィンベリー系、東側によく見られる系統を東フィンベリー系で分類している。

 両者にはっきりとした違いがあるわけではないが、どちらかというと東フィンベリー系の輪郭はやや面長で顔立ちも比較的薄いといった傾向がある。


●反ダールデモ・ダール狩り

 ジルヴィア・ダールベルクの目撃事件をきっかけにロゼで始まった運動。ダール体制時代にヘルデンズ軍に媚びていたフラウジュペイの政治家と、ロゼ市内に潜伏しているヘルデンズ軍元幹部及びそれを匿った人たちの摘発を目的として、市内の各地で活動を広げている。次第に対象はヘルデンズに関わる全てに広がり、またロゼ以外の市町村でも活動が始まった。


●アルトロワ広場

 フラウジュペイ史の大舞台であるロゼの中心的な広場。

 今では観光地になっている。


●メルジェーク反乱

 フィンベリー大陸戦争の後半にメルジェークで起きた市民蜂起。

 結局ヘルデンズ軍の手ひどい返り討ちに終わり、国は再起不能に追い込まれた。

 かつてロマンやヤーツェクも参加していた。


●東ヘルデンズの現状

 戦後処理の流れでオプシルナーヤに掌握されて以降、地元大手企業は強制買収と経営破綻に追い込まれる他、生活物資のほどんどに高い税が課せられるなど、あらゆる面でオプシルナーヤに搾取されている。

 またフィンベリー大陸戦争で倒壊した建物は、解体・立て替えを許されずに多くがそのまま残されている。東ヘルデンズに滞在するオプシルナーヤ人もヘルデンズ人を「人殺し」と呼んで横暴を働くが、地元ヘルデンズ人は無気力にそれらを受け入れがちになっている。


●反オプシルナーヤ活動

 理不尽で横暴なオプシルナーヤ軍の撤退を目論んで東ヘルデンズやメルジェークの水面下で起きている反対活動。東ヘルデンズ各地のオプシルナーヤ人地区で爆発テロを起こしていたりする。

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