架空の海上都市で巻き起こる『理想』と現実

科学の最先端を行く海上都市を舞台にした、魔術と魔獣の終わらない戦い。
現代異能伝奇アクション…とでも銘打つべきでしょうか。いや、もっとこれはハイブリッドな何かだ。明らかに既存作品の一歩先を行っています。
読者に判りやすい形で言語化されていますが、物語の背景を探ろうと思索するたびに、底が見えない設定と人物造形に唸らされました。

主人公・吉野ユウト君を始めとするいくつかの小グループごとに視点が設けられ、さながら群像劇のごとく筋が進みますが、揃いも揃ってみんなキャラ濃すぎです。
一人一人の人生・歴史を仔細に作っているのが伺えます。
そこまで設定を膨らませると本筋の邪魔になりそうですが、綺麗につじつまが合って、山場の盛り上げ所にストーンとハマった瞬間の驚きようと来たら!

個人的に感銘を受けたのは、タカオを主軸に据えた第3章でした。
ミズキやガイと言った仲間たちの在り方が、ユウトのグループと似て非なる対比構造になっていて、それぞれの目的で共闘するストーリーラインがお見事。読みながら「あれっこれプロのラノベだっけ?」と、他の同ジャンル作品とのレベルの違いを感じました。いや、ほんとに。
タカオ自身の過去や因縁にも触れられており、ユウトに並び立つ「もう1人の主役」として存在感を植え付けたのではないでしょうか。

…タカオ好き過ぎだろ自分。
あ、女の子キャラでは御影ちゃんが好みです。結婚して下さい。

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