想いは必ず力に変わる

新人賞の二次選考を通過した作品とだけあって、文体、設定、展開がとてもしっかりしている印象でした。
『想力』をテーマに広がる物語は奥行きがあり、神話の要素と上手くリンクしていました。ある意味最高の演技派とも言える七海の設定とも必然的な繋がりがあり、お話の構成力にも感嘆しました。

個人的にはやはり強大な力を持ったアモンが好きですね。そんなアモンにも食い下がる敵など、各キャラクター・悪魔達の個性も光っていました。同じ神話モノを扱う身としても、勉強になる部分が多々ありました。

少しシビアな話をすると、女性声優というキャラを主役に据えたのは、読者層と少しズレていたのかなと。七海のプロフェッショナルな部分は好感が持てるのですが、10~20代の男子は感情移入しにくいのかと。空羽をもっと前面に推し出しても良かったと思います。
設定や展開にも、もう少し独創性や意外性があっても良かったのかもしれません。想力と七海の設定を考えると、オチも多少予測できてしまいました。
(※あくまで編集者ではなく一人の書き手としての意見なので、あまり真に受けすぎないで欲しいですが……。)

しかし全体的に見て、非常に完成度の高い作品でした。個人的には星4つくらいの印象です。
世界観やキャラ人数を無理に広げず、フォーカスを絞ってまとめたのが良かったです。
安易にハッピーエンドにせず、キッチリ落とし前を付けたのも好きです。
続きを広げることもできそうなので、期待しつつ賞賛を送らせて頂きたいです。
いやぁ、面白かった!

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