作者さんお得意の、『重厚』という言葉すら軽く感じられてしまうようなヘヴィでシリアスなダークファンタジーです。
軽い気持ちで読み始めると、恐らく後悔するレベルでしょう。しかし一度足を踏み入れてしまえば、その極限まで練り上げられた文章と設定に、きっと目が離せなくなるはずです。
フランケンシュタインの怪物や人造人間をテーマに、生と死、人間と被造物、優しさと暴力が相反しつつ渦巻く世界の中で、希望と絶望が濃すぎるくらいに色濃く表現されています。
よくこんなモン(褒め言葉)思い付くなって。そう感じさせる物語でした。まだまだ続きが気になります。
選択される全ての文字の羅列、張り巡らされている伏線から目を逸らすな。
そんな作者のこだわり抜いた世界観に、冒頭からやられること間違いなしの一作です。
好奇心と歪んだ狂気が産み出した被造物。フランケンシュタイン、人造人間と聞けばイメージの湧く方も多いでしょう。
『はじめに神は天と地を創造された』しかし——罪を背負いし人間が好奇心故に魂に触れるとは、人自らが創造主となることになろうとは……果たして神の想定内だったのであろうか。
人造人間技師のルーザー・アンブロシア。彼は禁忌に手を染め第二の怪物を生み出してしまう。
この作品の中で生まれくる第二の怪物とされる彼女の名はシオ。
どこまでも残酷でゴアな表現の中に、それでもどこまでも無垢な彼女が時に痛々しく、報われてほしいと願う読者は多いだろう。
本当にこんな世界が日常の真横で繰り広げられているかのような繊細な描写と、じわじわ襲ってくる狂気のバランスが凄い一作。
彼がそこまでして追い求めたものは一体。
そして彼女は『 』を識ることができるのだろうか——。