登場人物の仕草、言動が少々誇張し過ぎでは?、と感じる部分が幾つか有ったのだけど、それが事件解決のヒントだったんだ、と読了後に納得してしまう。推理小説作家エラリー・クイーンっぽい書き方だったんだ、と感心しました。WEB小説にしては凝ってます。
本題には無関係な事を書き連ねると、
何故ヒロインを胸ペチャと設定したのか? 巨乳の友人に協力させるため? 巨乳の友人は、密かに優越感から協力していたのか?
或いは、ヒーローは本当に待受画面の人物に心を寄せていたのか? そんなキャラだから、ヒロインは胸ペチャなのか?
みたいに、くだらぬ点に注意を払うと、結構楽しめます。
センスの滲み出るコピーに惹かれ、一気に読み切ってしまいました。
気づいたら朝5時半。
読みやすく、情景が思い浮かべやすい文体のおかげで、物語へ没入することができました。
ぼくはミステリを推理しながら読むことがないので、トリックの巧拙についてはよくわからないのですが、単純に青春モノとして見ても面白い。
ぼく自身は女子高生だったことはないし、これからなることもないのでアレなんですけど、鮎の敷島に対する微妙な感情の揺れが丁寧な文体で表現されていて、もう本当にアレでした。
戻りたい、青春に。
これは作者が狙ったことかどうかはわからないんですけど、この「あまずっぺぇ〜」みたいなの、二人の持つ時代遅れの“ケータイ”のせいもあると思うんですよね。
ぼくたちおじさんは、高校時代携帯っつうとアレでしたもんね。パカパカ。懐かしい。
そういうわけで、ぜひとも青春を失った30代前後のくたびれた大人たちにこそ、この作品をお勧めしたい。
ぼくはそう思います。
登校中、あろうことか同じ学校のサッカー部エース、泉田秀彦がマンションの窓から落ちていくシーンを目撃してしまった川原鮎。
一連の騒ぎの中、彼女は泉田の携帯へ謎のメールを送っていた“ジャンピング・ジャック”との対決を決意することに。
まず感じたのは構成力の高さです。1話読んだ直後、ごく自然に2話めを読み始めてしまいました。
一人称による軽妙な文章運びと、それこそページをめくるごとにひとつずつ物語が解き明かされていくワクワク感、この「筆の引力」はすばらしいのひと言。
そしてすべてのカギになるジャンピング・ジャックですよ!
死んだ泉田君を追う中で浮き彫りになってくる、彼と同じように転落死した他の高校生の存在。
彼らとジャックの関係は? ジャックの目的は? そもそもジャックの正体は?
最後まできっちり物語を引っぱってくれる強力な存在感、まさにミステリの真髄を味わわせくれる名敵役なのです。
おもしろいミステリが読みたいなら迷わずこれ! お勧めです。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)
レビューの中に、この作品の真相に触れる部分があります。未読の方はご注意ください。
mikio氏による『あゆてつシリーズ』の第一作目『ジャンピング・ジャック・ガール』は、ヒロインである川原鮎があさ登校するためにある「橋」を渡る描写から始まる。
すでに本作を読み終えた方はこの「橋」が本作における重要な舞台になっていることはご存じではあると思いますが、まずこの「橋」の役割について考えてみたい。
橋とはそもそも低地や川などにより隔てられた場所と場所とを繋ぐために架けられるものだが、この作品ではかなり明示的に日常と非日常とを架け渡す役割をあたえられている。
日常と非日常。こっちがわとあっちがわ。此岸と彼岸。言葉はなんでもいいが、何やらあっち側の世界ではこっち側の世界とではまったく違うシステムで世界が動いているようだ。
第1章で鮎は橋を渡り終え交差点に入ろうとした瞬間「軽トラ」にはねられかけ自転車に急ブレーキをし事なきを得るが、そのために同級生である泉田秀彦の落下を目撃し、以後亡き親友の死の謎を探る敷島哲と共に非日常の事件の渦の中に入っていくことになってしまう。
ここで鮎の兄である流がサッカーの道をあきらめ五十海に帰ってくることになってしまった原因を思い出してもらいたい。流は進学先で白い「軽トラック」にはねられ足に重い障害を負うことになる。この白い軽トラックという符合。(本作ではジャンピング・ジャックのメールの送信に使われる白いプリペイド式携帯電話や、坂下亜里砂が飛び降りた後に交換された真新しい室外機といい「白」はなにやら不吉な色として使われている)
また第8章のクライマックスではこの橋の上を舞台に事件を影で操る「真犯人」との対峙。そして異様な雰囲気のなかでの最終的な謎解きが行われるが、これは橋の上という舞台の特性をおいて語ることはできない。
ここで物語と鮎の心は日常と非日常を架け渡す橋の上で、こちら側とあちら側を繋ぐ橋の中心で、大きく大きく揺れ動くことになる。
兄・流を殺すか殺さないか。
つまりこの『ジャンピング・ジャック・ガール』という物語はヒロイン川原鮎が「橋」を渡るか渡らないかの物語なのである。
橋を渡り兄が構築した理(ルール・システム)が支配する非日常、橋の向こう側の世界に身を置き続けることになるのか。
それとも兄・流とは対比的に描かれる同じく身体の障害によりサッカーの道を挫折しながらも腐らず生き続けるパートナー敷島哲と共に日常の世界に回帰するのか。
ここで敷島哲は言う
「俺はこれ以上誰も殺させはしないし、死なせもしない。あんたが妹のことをどう思ってるのかは知らないが、俺は川原鮎まであちら側の人間にするつもりはない」
と。
かくして川原鮎と敷島哲の最初の物語は橋の上で繋がった。
この物語は橋から始まり橋で終わる。
行きて帰りし物語は日常の世界に回帰することによって終わりを迎えるのである。
そしてエピローグへ。
悪意の伝道者、伝播と感染
ジャンピング・ジャック(流)の真の目的とはなんだったのであろうか?
学校裏サイトがそうであるように、悪意はインターネット上でいとも簡単に増幅され伝播し他者へと感染する。
透明校舎のカリスマ、ジャンピング・ジャックの作ったシステムは本当に武器なき者に武器をあたえ世界と戦うためにあったのであろうか?
強固で強大で凶悪な世界(システム)と戦うために作られたジャンピング・ジャック・ゲーム(システム)。
秩序(システム)を破壊するためのシステム。
少年少女を誘惑しタガを外させ破滅のトリガーを引かせようとする悪意の伝道者、闇の救済者こそがジャンピング・ジャックの正体ではないだろうか?
彼は家族に絶望し周囲絶望し世界に絶望し死にたかった。
だが、ただで死ぬのは面白くない。
世界に復讐しなくては。
そして彼女はその後継者として選ばれた。
彼は彼女に自分を殺させたかった。
そして殺され死んだ後もこのゲームを続けるために彼女を操り人形したかったのではないか。
ジャンピング・ジャック・ガールに。
いやぁがんばりました!
オマエ程度の一介の読者風情がなにを頑張ったんだよって意見はごもっとも!
だけど聞いてくれ!
このジャンピング・ジャック・ガールのタイトル!
読後にタイトルに立ち返ってみたくなる本作を、リスペクトしてというかね。
その意味を今一度省みてね。噛み締めたくなる当時の機微を、このレビューの題で表現しようとした涙ぐましい努力の結晶がコレなんです!
結果から言えばまぁ無謀だったんだけれども。
総文字数約十一万文字パワーにたった三十五文字でなに立ち向かってるんだと物量的な見地からも一度は我に返ったけども、
それでもなんとかと捻り出しました!
このレビューを読んだ人はこのお題目も最後に噛み締めてみてください!
あとこのレビューだけじゃなんにも伝わらないでしょうから、
未読の人は本作もセットでどうぞ! よしっ俺はこれが言いたかった!
では本題へ、
先に触れたタイトルへの解釈が味わい深いのはモチロンですが、
それが実は本編中ずっと続きます。嘘でも誇張でもなくガチです。
そしてその次々と乱造される解釈でがんじがらめになった謎が、怒涛の勢いで紐解かれる論理的なカタルシスは特に群を抜いていました。
思い返すとあのナゾとはずっと付きっ切りだったワケですし、
遊んでる気分にさせるコンテンツというよりは、共に遊んでくれるコンテンツという気もしますね。
小説という媒体でありながら、
ともにゲーム性も兼ね備えているというサプライズ。
他にも彷彿とさせる部分が所どころあってソコが個人的に嬉しいところでした。
情報の提示のことごとくがストレスフリーだから尚更ね!
以上がまさに自分が憧れるミステリーの理想形。
それをまた一つ開拓できた想いです。仮に似通った様式で物語を認めるなら、
本作こそが自分の作品の核になってくれた作品であると胸を張って言えると思います。
ジャンピング・ジャックにさよなら――
そしてまた会おう!
学園、ボーイミーツガール、連続飛び降り事件、青春。
この物語は、終始、川原鮎という少女の視点で語られるのですが、それでもキャラクター一人一人に、光と陰の深い物語があります。
なぜこの人はこんなことを言うのか?
なぜこの人はこんなことをしたのか?
それぞれのキャラが独自の悩み、独自の人間性を持っている。
主人公も語り部も川原鮎、彼女こそ読者の視点となるのですが、深く練られたキャラたち一人一人が生きている。
良くも悪くも人間臭い、個性あるキャラたちは、群像劇を読んだような読後感を与えてくれました。
長くなってしまいましたが、台詞回しやトリック、どれを取っても素晴らしいミステリーでした。続編もあるそうなので、楽しみです。
遅ればせながら拝読しました★
非常に面白かったです!
読み始めて一気読みに近い形で読了しました。
高校生の連続飛び降り自殺事件に隠された謎に挑むのですが、まず状況が自殺でも他殺でも疑わしい、実に謎多きシチュエーションが光っています!
意外な結論を迎え、さらにはどんでん返しと、読者の期待を次々に良い意味で裏切り驚嘆致しました。
最初は意味が分からなかった伏線も、しっかりと回収され、最後には意味を為します。
凄惨な事件にも関わらず、意外にもスッキリした読後感。
もっと早く読んでおけば良かった、というのが率直な感想です。
すでに多くの方が絶賛されているので、私から改めて魅力を語るまでもないのですが、それでもレビューせざるを得ないほどのクオリティーの作品であることもまた事実なのです。
素晴らしい作品をありがとうございます。
この物語は、川原鮎という女子高生が飛び降り自殺を目撃するところから始まります。
取り調べを受けた彼女は、そこでとある名前を聞きます。
それは、ジャンピング・ジャック。
そして鮎は、この町で連続している自殺事件に、ジャンピング・ジャックが関係している事を知ります。
自殺事件の謎を追っている男子生徒、敷島哲と出会い、彼女はジャンピング・ジャックの正体を追います。
明かされる残酷な真実の果てに、鮎はどんな答えを出すのか―――――。
『ジャンピング・ジャック・ガール』という物語は、ミステリー小説でありながら同時に青春物語としても完成度が高いです。
カクヨムでは結構珍しい本格的な推理小説に、川原鮎と敷島哲という個性的なキャラを加える事で、他にはない読み味の作品になっていると思います。
しっかりとした構成と文章力は読者をひきつけますし、次々と巻き起こる出来事に、続きが気になってしょうがなくなってしまいます。
こんなミステリをもっと読みたいと思わせるくらい、素晴らしい作品でした。続編『スクール・マーダー・フェスティバル』も、ぜひ。
うわあ。すごい……。
呻くようなこの感想が、まず口から漏れました。
本当に小説らしい小説。
本として手元に置いておきたい、と本気で思いました。
文章や表現力が非常に長けていらっしゃるので、冒頭から引き込まれてしまい、途中で止める事ができませんでした。
ハードボイルドなミステリーなので、主人公と共に事件を推理していく過程が存分に味わえます。
主人公・鮎の人柄が良く、小出しにされる恋愛感情と揺れがたまりません。
無愛想で少しぶっきらぼうな相棒の哲君の優しさには、鮎でなくとも一発K.O.です。
続編が始まったようなので、アユテツコンビの関係を注視しつつも、これからの展開を楽しみにしながら追いかけさせていただきます。
ミステリーとして、青春小説として、読むことができる小説、というのが私は好きだ。
この小説は登場人物の心情描写、トリックについてそれほど無理と感じる所はない。推理物過ぎず、青春物過ぎないバランス、これをこの分量で矛盾なく無駄なくまとめられた構成は軽快さすら感じる。犯人については他の方も書かれているがかなり早い段階で検討がつく。しかし、事件の全貌はわからなかった。ぐいぐいと読ませてしまうのは、登場人物の心情が丁寧に魅力的に書かれているからだろう。それ故に、読んでいる最中は、事件と主人公がどう関わっていくのかが、非常に楽しみだった。
事件を通して、主人公がひとつ成長して行くのも良かった。
この物語に描かれる凶器つまり武器は、とても切なくて悲しくて、強い。ネタバレになるので書けないのだが、犯人が武器について語るシーンは胸に来てとても好きだ。
一点、惜しいなと思った所がある。
所々の唐突さだ。
一連の事件について調べた結果は冒頭で一気に羅列するのではなくもう少しシーンを割いて表現してくれた方が推理も事件も機械的には感じなかっただろうし、主人公の最後の行動についてももう少し所々伏線を張ってあった方がすんなり落ちたと思う。