ミステリーとして、青春小説として

ミステリーとして、青春小説として、読むことができる小説、というのが私は好きだ。
この小説は登場人物の心情描写、トリックについてそれほど無理と感じる所はない。推理物過ぎず、青春物過ぎないバランス、これをこの分量で矛盾なく無駄なくまとめられた構成は軽快さすら感じる。犯人については他の方も書かれているがかなり早い段階で検討がつく。しかし、事件の全貌はわからなかった。ぐいぐいと読ませてしまうのは、登場人物の心情が丁寧に魅力的に書かれているからだろう。それ故に、読んでいる最中は、事件と主人公がどう関わっていくのかが、非常に楽しみだった。
事件を通して、主人公がひとつ成長して行くのも良かった。
この物語に描かれる凶器つまり武器は、とても切なくて悲しくて、強い。ネタバレになるので書けないのだが、犯人が武器について語るシーンは胸に来てとても好きだ。

一点、惜しいなと思った所がある。
所々の唐突さだ。
一連の事件について調べた結果は冒頭で一気に羅列するのではなくもう少しシーンを割いて表現してくれた方が推理も事件も機械的には感じなかっただろうし、主人公の最後の行動についてももう少し所々伏線を張ってあった方がすんなり落ちたと思う。

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