まず、第一章を読んで手が止まる。
この小説……二人称じゃないか、と。
二人称小説自体、文学界では中々目にかかれない。
何故かというと、書くのが難しいのと読者が置いてけぼりになる可能性が高いからだ。
だが、このレビュー数を見ておわかりになるかと思いうが、しばらく読み進めると全く気にならなくなるほど、物語に入り込んでしまっている自分が居る。そして思う。
ニャー先輩がかわいい、と(重要)
物語は起承転結というよりは三幕構成意識なのかな?
序盤は欠落症が蔓延っているのにもかかわらず、何故こんなにも暖かみのある話なんだろうと、思った。
だが、その期待に応えるかのように中盤にさしかかると、急に影が差す。
そして、ネタバレになるから言えないものの、ある何か”違和感”を感じる。それに気付くと、皆こう思うだろう。ははん、なるほど、と。
最後は……ネタバレしそうで語れない!
ぽっと明るさが灯るような終わり方でいて美しい。
未読の方は是非読んで頂きたい。
私の中で応援中である作品の一つだ。
私も創作家の端くれとして、文章の人称はいろいろと考えてきた。
私・僕の一人称なら書ける、固有名詞の三人称なら書ける。
でも、「貴方(あなた)」の二人称は、どうやっても私には書けず、いつしかそれを諦めた。
読者として、たとえば北村薫さんの『ターン』のような二人称小説の名作に触れてきましたが、自分で書くとなると、もう何一つアイデアが思い浮かばないのだ。
しかし、それが、この小説ではなんの違和感もなく描かれている。
それどころか、ただの技巧的な挑戦ではなく、その二人称の使用でなければ物語が成立しないという形で、キレイにはまっている。
そして、それを当たり前のように描いた上で、文章も丁寧で魅力的なのだ。
すごくいい作品を拝読しました。ありがとうございます。
この先も楽しませていただきます!