概要
───私は、彼女を忘れるたびに殺していた。
御厩透嗣(みまやとうじ)が目を覚ましたのは、九州北部の山中に建つ私立精神療養施設――胎生心理研究院だった。
自分の名前は分かる。
だが、年齢も、職業も、家族の顔も思い出せない。
記憶の中に残っているのは、たった一人の女だけだった。
廻谷まひる(めぐりやまひる)。
夏の海辺で笑ったこと。
古い映画館で手を握ったこと。
二人きりで結婚を約束したこと。
そして婚礼の夜、真昼の細い首を、自分の両手で絞めたこと。
透嗣を担当する精神科医・薬師鼎(やくしかなえ)は、まひるという女性は存在しないと告げる。警察にも戸籍にも、彼女の記録はない。透嗣が抱いている恋愛と殺人の記憶は、長期昏睡と精神的外傷によって作り出された妄想だという。
しかし研究院の夜には、まひるの声がする。
閉ざされた窓の外か
自分の名前は分かる。
だが、年齢も、職業も、家族の顔も思い出せない。
記憶の中に残っているのは、たった一人の女だけだった。
廻谷まひる(めぐりやまひる)。
夏の海辺で笑ったこと。
古い映画館で手を握ったこと。
二人きりで結婚を約束したこと。
そして婚礼の夜、真昼の細い首を、自分の両手で絞めたこと。
透嗣を担当する精神科医・薬師鼎(やくしかなえ)は、まひるという女性は存在しないと告げる。警察にも戸籍にも、彼女の記録はない。透嗣が抱いている恋愛と殺人の記憶は、長期昏睡と精神的外傷によって作り出された妄想だという。
しかし研究院の夜には、まひるの声がする。
閉ざされた窓の外か
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