カワウソはうそつき

三遠信精機の企業城下町として知られる岩戸市。
江戸時代、縦横に作られた堰の景観が魅力のまち。
そこにニホンカワウソが棲息しているという噂が広まった。
絶滅したはずのニホンカワウソ。それが生きている。日本じゅうが色めきたった。
マスコミが1億円の懸賞金を出すといい、日本じゅうから岩戸市に人々が押し寄せた。
縦横に流れる堰の堤防は、車で溢れ、交通が麻痺した。違法駐車の車が道を塞ぎ、物流が機能しなくなった。
三遠信精機も、下請けも工場が止まった。市外から来た無法者たちは畑の作物を荒らした。
結局、カワウソは発見されず、市民が大いに迷惑を蒙っただけだった。
あれから20年。ひとつの事件をきっかけに、カワウソ騒動の嫌な記憶が岩戸市によみがえる。
果たして、カワウソはいるのか。