このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(75文字)
それぞれのことわりの内にある者同士の交流を描いた、絵画的な余韻が残り続けます。 ほんのりと温みがあり、静かで……少しの痛みを残す。そんな空気感に満ちたお話です。 葉先に揺れる露の影の様な、密やかな彼等の気配は、読後もずっと心に残り続けることでしょう。
同じ言葉を繰り返すことしかできない木霊と、嘘をつくことしかできない天邪鬼。自由に思いを伝えることのできない二人のやり取りは、とてもユニークで印象的でした。みなさまもぜひ、この物語を最後まで見届けてください。
古い朽ちかけた木の虚に生じたものか。赤い実をつけた烏瓜の蔓に縛られて、 人の声音を繰り返す。何処から流れて来たものか。疎まれ憎まれながらも残散髪を靡かせて、 不吉な予言を繰り返す。繰り返す事しか出来ないモノと、祈る様に不吉な凶事を告げ回るモノ。 世の理からは外れて生きる 二つの異形の諍いは。 似たモノ同士で互いに 不愉快 をぶつけ合う。 だが、それは。神にも近いモノたちの邂逅と厭離、そして 惜別の物語、
タイトル通りの二つの人外の物語。天邪鬼は天邪鬼故に人々から誹られ、その真意を知る者は木霊のみ。天邪鬼の真意に隠された心情を知り、読む者は切なさに涙するだろう。
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