檻の餌

強烈な緊張感が走る作品でありながら、どこか考えされられるところのある短編でした。
最初は僅かな昭和教育の風貌を感じましたが、おそらく違いました。
この世界では深刻な食糧難があったのかもしれないし、全国的な食に対する考えの統制があったのかもしれません。
いずれにしても、「いただきます」と言うことの重要性や責任を、恐怖によって読み手にまで強烈に伝えてくるのは、思わず震えてしまいそうな発想です。

一体「いただきます」を何回繰り返せばいいのか

一体「ごちそうさま」を何回繰り返せばいいのか

一体「いただきます」はなんのために存在するのか

一体「いただきます」は彼らにとってどんなものなのか

恐怖の執行を示すもの？

食材に対する感謝？

檻から出られない絶望感？

一体「給食」はどんな価値があるのか

絶望の時間の代名詞？

栄養を摂取するための楽しい時間？

先生の監視に対する恐怖？

彼らは食べ続ける

彼らは今日も「ごちそうさま」を言い続けられるように祈りながら

こっわ……え、いや、こーっわ……。

描かれているのは ある教室での給食の場面。
が、様子がおかしい。みんな、「いただきます」の声は大きいし、一心に食べている。でも、全く平和じゃない。ただ１人のせいで。

この１人というのがとんでもないやつで、なのに「どこかには こうして問題にならないまま存在するんだろうな」と感じられるのがたまらなく怖い。

読みながら心臓がドキドキしました。こんなにわくわくしないドキドキは久々です。
緊張、不快、怒り、反発心……色々な激しい感情が一斉に湧きあがりました。作者さまの表現力が素晴らしいのです。
対して、私の表現力ではこの作品に詰まっているものを表しきることがで…続きを読む