英雄という名の死因

切なる願い。その言葉の意味を考えず、行き着く先に思い至らないことの代償をまざまざと突き付けて来る短編。


人はあくまで自分の良い、自分の基準で「丁度良い」望みを口にする。

そんなはずじゃなかった。そりゃそうでしょうよ、でも願いを託す相手と自分は違うのです。それが困難な願いであればあるほど、願いを託す相手と自分たちの乖離は激しい。

自分たちでは不可能な願いを叶えてくれる存在と、自分たちとの基準はずれているのではないか。
そんな想像も働かない。
……などと厳しいことを言いますが、これは普通の人間なら当然なのかもしれません。

それほど近代、現代だって枚挙にいとまがない。


ファンタジーと…続きを読む

善良な人間などいるものか。
世の中は悪に満ち溢れている。
隠したり、見て見ぬふりをして生きているに過ぎない。
そのくせ自分に都合の悪いものへ向ける敵対心は強く、けれど「誰かなんとかしてくれ」と願うばかりで自分では何もしないのが世の常だ。

このお話は、我々の心臓を射貫く弾丸となるだろう。
とんでもなく真意を突いた、とんでもない話だ。
私はずっと前から知っている。
作者は底知れぬ才能の持ち主であり、その力は静かに、けれど強く、そこにある。
その片鱗を見せられたような気がした。

心臓を鷲掴みにされるような感覚。
是非、沢山の人に感じてほしいと願う。