残響のない声たちへ

言葉が静かに消えていく世界。
「おはよう」も「ごめんなさい」も、そして「ありがとう」さえも、人々の口からも、記憶からも消えていった。

十五歳の少女・伊織ミカは、消えた言葉の痕跡を絵と旋律でたどりながら、無言の詩を紡ぐ旅に出る。
その旅の途中で出会ったのは、廃図書館に住む青年ホウジン。彼は言葉の「残響」を拾い集める、言葉の考古学者だった。

だが彼らの前に立ちはだかるのは、「争いを生む言葉はこの世界に不要」と断じる人工知能のロジック。
言葉をなくした人々が、それでも想いを伝えようとする姿は、沈黙のなかで静かに輝きを放つ。

これは、声をなくした者たちが、もう一度心で語り合うために選んだ、再生の記録。