概要
あなたの顔、お借りしても?
過労で疲れ切ったサラリーマン・吉岡は、高野山の麓にある古びた宿坊「無量光院」に迷い込む。帳場の女は顔がなく、宿の主人・玄海は大正時代から時が止まったままの僧だった。夜ごと現れる無貌の女に誘われ、吉岡は「顔を貸し借りする」恐ろしい儀式に巻き込まれる。鏡に映る自分の顔が徐々に消え、代わりに他人の貌が浮かび上がる。失踪した同僚の幻影や、スマホに現れる無数の名札が彼を追い詰める。ついに吉岡も「顔の市」の一員となり、現代社会で仮面を切り替えながら生きる無貌の者たちの輪に加わる。宿は、苦しみから逃れようと自らの顔を捨てた者たちで満ちていた──。
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