概要
たぶん、彼女は今も落ち続けているんだと思います。
学校で起きた怖い話。
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- ★★★ Excellent!!!何かを見た……それを霊と呼んでいいのか、分からないけれど
あれは、僕がまだ中学か高校生だった頃。
夏休みになると決まって、お昼のテレビ番組で心霊体験の再現ドラマの特集が放映されたものでした。
告白調の語り、今では古い物語の中でしか姿を見なくなった、4:3のアナログテレビの画面、ぼんやりとした画質、ちょっとつたない名も知れぬ俳優たちの芝居。
過度に脅かすような演出のない、淡々とした体験の積み重ね。
そこへ、ふいに差し込まれる、静かな恐怖。
霊だったのか、錯覚なのか、錯覚だと信じたい――。
けれどたしかに感じた、誰かの恐怖が語られる。
そんな匂いのする、物語でした。 - ★★★ Excellent!!!屋上からの転落。そのリアルな考察が、強烈な臨場感を引き出します
主人公の淡々とした「語り」が、とにかく強烈な存在感を持った作品です。
ある日、同じ学校に通う『Aさん』が屋上から飛び降り自殺した。
主人公はその時の音や、落下後の『状態』を目にするなどの体験をする。
そこから飛び降りて死んだAさんにまつわる状況、飛び降りることについての現象的な考察などを進めていくことになります。
この語りの感じがとても真に迫っていて、文章を読んでいく内に、その場の光景がありありと脳裏に浮かんでくるようになります。
死後、Aさんはどうなったのか。人が幽霊となる『過程』みたいなものまで、現実と地続きにリアルに想像させられる作品です。