主人公の淡々とした「語り」が、とにかく強烈な存在感を持った作品です。
ある日、同じ学校に通う『Aさん』が屋上から飛び降り自殺した。
主人公はその時の音や、落下後の『状態』を目にするなどの体験をする。
そこから飛び降りて死んだAさんにまつわる状況、飛び降りることについての現象的な考察などを進めていくことになります。
この語りの感じがとても真に迫っていて、文章を読んでいく内に、その場の光景がありありと脳裏に浮かんでくるようになります。
死後、Aさんはどうなったのか。人が幽霊となる『過程』みたいなものまで、現実と地続きにリアルに想像させられる作品です。