ホラーのオチだけ置いていく

作者 春海水亭

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★★★ Excellent!!!

『幽霊の正体見たり枯れ尾花』と言うけれど、ホラー物の最大の弱点は、ストーリーが進み怪異の解像度が上がる程、怖くなくなってしまう事だろう。人間は理解できないものに、自らが抱く恐怖の理想像を投影して想像を膨らませ、恐れる。当然、答え合わせが進むほど、恐怖の理想と怪異の正体はズレていく。『なんだまた殺された女の怨念かよ』『なんだまた人里離れて隔離された村の変な風習かよ』『なんだまたミトコンドリアの暴走かよ』大人になって触れる作品が増える程、ホラーのオチに対してそんなガッカリ感を抱いてしまう。対して今作はホラー作品序盤における『正体の分からない不条理への恐怖』ばかりを集めた作品だ。『オチだけ置いておく』とタイトルにはあるが、本作はむしろオチなし作品なのである。ホラーの盛り上がり部分。今は懐かしいテレビの怪談特集ならば『キャアアアア』と女の叫び声のSEが入る所だけ。その後登場する胡散臭い霊媒師による解説なんかはすっとばして、ただただ怖がらせることを目的として、割り切って書かれている。『ホラー作品に読者を怖がらせる事、それ以外に必要か?否』そんな作者の強い意志を感じる。登場人物達の織りなすヒューマンドラマだとか、ストーリーの意外性や起承転結、そんなものに逃げたりしない。怪異の理由説明がないから、読者には最後まで安心感が与えらない。何が何だか分からない、怖い。ずっとその気持ちのままだ。読者はまるで肝試しの途中にホラースポットに置き去りにされた様に、途方に暮れてしまうのだ。
何より凄いのはそれだけの作品を、読み物として成り立たせる作者のセンスと文章力。ちょっと覗くつもりが、引き込まれて、先を読むのが止まらない。いつの間にか、自分も作者の描き出す無機質な無駄のない不条理世界に捕らわれている。そこには恐怖の根源だけがある。そんな作品である。

★★★ Excellent!!!

どの話も不気味と言いますか、妙な後味を引く話でとても怖かったです…最高でした(^^)
登場する人物は既に亡くなっていたり、行方不明になっていたり…直前の痕跡だけが明かされる本作からは、その後どうなったのかわからないことによる怖さを感じさせられました。

読み終えた今でもゾッとする感覚が続いています…文章だけでここまで表現できるのは本当に素晴らしいです!!!

★★★ Excellent!!!

そういうモヤモヤがとにかく残り続ける。

一話を読み切れば完全に内容を理解できるかと言えばそうではなく、
「え? じゃあ、いったい何が? え!?」
という、より恐怖心を煽られるものが多かったです。

ホラーを読みなれている人は、もしかしたらすべての話の内容を前後合わせて想像出来たのかも知れません。それはそれで面白いでしょう。しかし、読みなれていないからこそ、読後のあとを引く恐怖を味わえるのかも知れません。





「え? なんです——」

★★★ Excellent!!!

なにかがあったという未明の不気味さに背筋を冷やしながら一気に読み切ってしまいました。
この短い文章でここまでの不気味さを表現できるということに感動すらしてしまいます。
ただし今日、いえ昨日ですね、の更新については読む前に注意が必要です(タイトルの漢字、なんて読むんでしたっけ?)。
驚く程に長いので、まだ途中なのにすっかり外は暗くて暗くて。


……僕にはセンスがないことが分かりました。
やっぱり筆者様はすごい。

★★★ Excellent!!!

ホラーのジャンルに得てして付き物の「なぜそうなったのか」、「これからどう立ち向かうのか」という憑き物落としは、読後感を良くするかわりに納得感や安心感を与えてしまいます。遠慮なく怖がりたい、というときにはそれが煩わしく感じることも時折ある。

その点本作は、明確な始まりが示されず、これといった終わりもないまま終わる、ある種突き放したようなシチュエーションだけを提示しています。結果として、想像力が掻き立てられ、行き場のない不安感を愉しむことができる。

言葉選びだけにとどまらない、筆者のセンスを強く感じます。

★★★ Excellent!!!

"純粋な恐怖"、というより"気味の悪さ"がジワジワを染み出してくる短編集。
一つ一つの話は短く、それこそちょっとした休憩中なんかに読めるので、お手軽に嫌な気持ちを摂取できる。
そして、それぞれの話は独立しているようでいて、つながっているようにも見える。
共通するキーワード、前後する時系列、淡々とした末路(オチ)……そこに自分なりの"理屈"をつけたとき、そこに新しいホラーを見つけてしまうかもしれない。

★★★ Excellent!!!

ホラーの美点は「怖いところ」で、難点も「怖いところ」。
前者はゾッとする、日常を掻き乱し、引っくり返すような恐怖。
後者は不安、喪失、後悔、絶望、負の感情を呼び起こす恐怖。

第三者視点のラストシーンを纏めた本作は、難点を描かず、美点だけを凝縮している。

★★★ Excellent!!!

この発想できなかったのが悔しいです。
オチが美味しいんだからひたすらオチだけ抽出するって作り方、考えてみればありだった筈なのに俺はできなかったのか……と書き手として悔しい……!
そして悔しいことに面白い!
想像しちゃうんですよ……
この前後の経緯とか、何が蠢いているとか、そういうの!
想像を掻き立てるという一点で突き抜けてくる作品でした!