きっと飛び立つように解き放たれる。そう信じている。

母親から厳しいピアノの指導を受ける少年。二人の閉じた世界の中で、少年は母親から期待という名の重荷を背負わされています。
その様子は見ていて心が苦しくなるほど。
少年にとって、ピアノは本来、楽しくて大好きなものだったはずなのに。

少年の世界の逃げ場のなさ、母親の厳しさが非常にリアルで、まるで自分のすぐそばで起きている出来事のようです。
そう。リアルなのは主人公の心情だけでなく、母親の行動や思いが凄く立体的な形を持っているのです。
だからこそ、苦しい。

しかしそこで現れた少年に、彼は。

少年の細やかな心の動き、もう一人の少年との出会いによって起きる変化。
それらを辿りながら読み、願わずにはいられませんでした。

どうか、どうか。

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