奪われても失われないものがある

胡姫と洛雪はそれぞれに痛みを抱え、言葉を交わすことも制限されながらも時に静かに時に激しく心を通わせていきます。二人はともに施政者から見れば敗れし者、特に洛雪が宦官となった下りは辛過ぎて……。けれど何もかも奪われても、誇りだけは自らの意思さえあれば失われることはない。洛雪は妹の生き様からそれを見て取っていたのでしょう。様々な情念を抱えた二人の想いがラストに向けて高まっていく様が、美しい表現で描かれています。お伽話のような歴史小説のような、幻想的な物語です。

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