それでも走る理由があるとするならば

皇帝から、胡妃を描けと命じられた宦官・洛雪。
家族を奪われ、自分の全てを奪った男に娶られ、言葉が通じない場所に押し込められた胡妃。
傷つけられる名誉も誇りもなく、「欠ける」ものなど今更ないと考える洛雪。
洛雪と胡妃は、お互いの言葉がわからないまま単語を一つずつ伝えていく。まるで交換するように。

宝石のような風景描写と、水墨画のような静けさ、そこにひそむ、個人は抗うことすら罪とされる残酷性。

心を殺せば、傷つくことも無く、いつ死んでもいい。
それでも、生きる意味を、衝動を取り戻すのならば。

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