もしその聲が聴けたなら。
- ★★★ Excellent!!!
『一期一会』という言葉がある。
千利休の言葉らしい。茶道における心得、携えるべき覚悟なんだって。
―― 一生に、たった一度きり ――
よくよく考えれば。なるほど、確かに。
あらゆる瞬間は、二度と再び訪れることはない。すべては、一生に一度きり。掛け替えのない瞬間に違いない。
そうと心得えたなら。
あらゆる事物が愛おしくなりそうだ。
敬いたくなるはずだ。
道端の石ころにも、縁を感じよう。
…もしも出逢いしそれが、星霜を重ねた古きモノならば?
彼らは、一体どれだけの瞬間瞬間を得てきたのだろう。
歓喜、無情、凄惨、親愛。
ありとあらゆる、風景。
この作品は、古きモノたちの声ならぬ聲を伝える物語である。理不尽にも目を背けず毅然と対峙し、愚者であっても見捨てることなくその背を包む、そんな作者だからこそ聴くことができる聲。
…僕らがその聲を聴けたなら。
あらゆる掛け替えのない時時を、垣間見ることができたなら。
僕らの瞬時はどれだけ色濃く変わっていくのだろう?
傑作です。震えるくらいに。
是非、お手に取ってみて下さい!