不穏なままで転がり続ける、二人の会話とその記憶

 「うわあ、読んで良かった! 得した!」と、読後に大変な満足感を覚えました。

 再会した二人が「少年時代の思い出」を語り合うという本作。二人の会話文のみで大半が進み、思い出として二人の過去に何があったのかが紐解かれて行きます。

 「もう一人の友達」に何があったのかが見えてきて、その「顛末」を巡り、じわじわと怖い何かが起こりそうな、不穏な空気がどんどん強まって行くことになります。

 ―――そして、ある瞬間に物語の様相が一変するのです。

 ミステリーが好きな読者だったら、「ああ、あのタイプか!」と膝を叩き、それだけで満足してしまいそうな感興を得ます。
 ですが、この作品は「ホラー」です。ミステリーとしての巧みさだけでは終わらず、そこからホラーとしての更なる不穏さへと繋げていってくれるのです。

 最終的に、彼らはどんな答えに行きついたのか。とても深い余韻を残してくれます。

 ホラーとしても一級品ですが、ミステリーとしても非常に高い完成度を持った作品と言えます。より多くの人に、この素晴らしさを味わってもらいたいです。
 

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