病気なんだね

彼女に


「みんなに嫌われている気がしてならないんだよね。そんなはずないけど、」

と言ってしまった。


「病気なんだね。」


彼女はそう返した。


確かに、病気なのかもしれない。

でも、もっと辛い人がいるはずなのに、私が病人を名乗っていいのだろうか。


一応、病名はいくつか付いている。でも、違う気がするのだ。


大層な名前を付けられているが、ただちょっと社会に適合しにくかっただけの一般人である。


夜、7粒の錠剤を流し込み、ベットに寝転がる。眠りに落ちそうだったその瞬間、彼女に言われた言葉が蘇る。


「病気なんだね」


多分、一生私はこの言葉を忘れない。いや、忘れられない。

その言葉は私の思考を縛る鎖になるんだきっと。


「病気なんだね」

    「病気なんだね」

 「病気なんだね」

  「病気なんだね」


頭の中で、声がこだまする。


「病気なんだね」



病気なのかもしれない。



「そうだよ」

「そうだよ、お前は病気なんだよ」

「病気病気病気病気病気病気病気」

「ようやく気づいたのかバカめ。お前は病気だよ」

「病気なんだね」

「病気なんだね!」





頭の中が声で埋め尽くされる。


私は病気じゃない。

病気なんかじゃないんだ。

そう、私はちょっと社会に適合しにくかっただけの一般人。



ただ社会に適合しにくかっただけなのに。


もうだめだ。

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