お題:タバコ 15分 『きっと明日も』

今日も先輩はタバコを吸っている。


とても美味しそうに煙を吸うのを眺めていると、私も吸ってみたくなった。


「美味しいの?」

「美味しくないよ。」

「じゃあなんで吸うの?」

「美味しいからだよ。」

「ふうん。そっか。」

「そうなんだよ。」


先輩の言うことはよくわからない。


先輩は、私に何も教えてくれない。


少し欠けている指輪をつけている理由も、金曜日だけいつもと違う銘柄を吸っている理由も、別に目が悪いわけじゃないのにメガネをかける理由も、何も教えてくれない。


不思議だ。



そういえば、今日の先輩は指輪をつけていなかった。



でも彼は、何も言わずに紫煙を揺蕩わせる。


美味しいのか美味しくないのかわからない煙を吸う。



それがなんだか、とても綺麗に見えた。


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