お題:過剰摂取 30分 無題
⚠︎これはフィクションです。薬物の過剰摂取などは推奨していません。⚠︎
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買ってきた市販薬をシートから出す。
ぷち、ぷちと音を立てて錠剤がシートから出ていく。
いち、に、さん、し……
ピッタリ1シート分。
喉に張り付く不快な感触を予想して少し嫌になる。
グレープフルーツジュースで3錠ずつ、流し込む。
思っていたよりは喉に張り付かなくて良かった、と思いながらグレープフルーツジュースを吸う。
舌に残った僅かな苦味と酸味がずっと留まり続けていた。
もうどうにでもなって仕舞えばいい、現実なんて見たくない。
そう思って薬物の過剰摂取の仕方を調べた。
過剰摂取すると記憶が一時的になくなる薬があるらしいと知った。
結構な値段する。GUだったらセール中のトップス2枚買えるくらいの値段だ。
まあ現実を一時的にでも忘れるための値段としたら安いだろう。
薬物というのは、一度知って仕舞えばそう簡単にやめられないことを知った。
味気ない現実を忘れられる、甘い、甘い、蜜。
蜜の味を覚えて仕舞えば、現実の味がより一層しなくなる。
そんな現実から逃げ出すために、薬を飲む。
どんどん薬の量は増えていく。
最初に飲んでいた量では全くダメだ。
あと一回、あと一回で絶対やめるから。そう思っていても薬の空き箱は増えるばかり。
いつのまにか、初めて飲んだ量の2倍飲まないと効果を感じることができなくなっていた。
体も、どんどんおかしくなっていった。
離脱症状による酷い頭痛、吐き気、動けないくらいの倦怠感。
気温が30度を超えていても、寒くて仕方なくなる。
汗が止まらなくなったと思ったら、寒くなって、また暑くなる。
何を食べても味がしない。
考えることも徐々にできなくなっていった。
いつのまにか薬の空き箱の数が30を超えた。
約*万円。
自転車1台か、2台買える。
薬にそんな値段を費やしていたなんて、思わなかった。
恐怖で、不安で、目を背けたくなる。
また、薬を飲んだ。
1シートでは効かないから2シート。
何か、考えなければいけないことがあった気がするけど。
視界が、歪んでいく。
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