お題:過剰摂取 30分 無題

⚠︎これはフィクションです。薬物の過剰摂取などは推奨していません。⚠︎

             **********


買ってきた市販薬をシートから出す。

ぷち、ぷちと音を立てて錠剤がシートから出ていく。


いち、に、さん、し……

ピッタリ1シート分。


喉に張り付く不快な感触を予想して少し嫌になる。

グレープフルーツジュースで3錠ずつ、流し込む。

思っていたよりは喉に張り付かなくて良かった、と思いながらグレープフルーツジュースを吸う。

舌に残った僅かな苦味と酸味がずっと留まり続けていた。






もうどうにでもなって仕舞えばいい、現実なんて見たくない。

そう思って薬物の過剰摂取の仕方を調べた。

過剰摂取すると記憶が一時的になくなる薬があるらしいと知った。

結構な値段する。GUだったらセール中のトップス2枚買えるくらいの値段だ。

まあ現実を一時的にでも忘れるための値段としたら安いだろう。



薬物というのは、一度知って仕舞えばそう簡単にやめられないことを知った。

味気ない現実を忘れられる、甘い、甘い、蜜。

蜜の味を覚えて仕舞えば、現実の味がより一層しなくなる。

そんな現実から逃げ出すために、薬を飲む。


どんどん薬の量は増えていく。


最初に飲んでいた量では全くダメだ。


あと一回、あと一回で絶対やめるから。そう思っていても薬の空き箱は増えるばかり。


いつのまにか、初めて飲んだ量の2倍飲まないと効果を感じることができなくなっていた。


体も、どんどんおかしくなっていった。


離脱症状による酷い頭痛、吐き気、動けないくらいの倦怠感。


気温が30度を超えていても、寒くて仕方なくなる。


汗が止まらなくなったと思ったら、寒くなって、また暑くなる。


何を食べても味がしない。


考えることも徐々にできなくなっていった。


いつのまにか薬の空き箱の数が30を超えた。


約*万円。


自転車1台か、2台買える。


薬にそんな値段を費やしていたなんて、思わなかった。


恐怖で、不安で、目を背けたくなる。





また、薬を飲んだ。

1シートでは効かないから2シート。



何か、考えなければいけないことがあった気がするけど。










視界が、歪んでいく。

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