n回目の朝
朝。いつもとおんなじ何の変哲もない朝。空虚な朝がやってきた。
のろのろとベットから立ち上がって、顔を洗いに行く。
半開きの目に無理やりコンタクトレンズを入れて、朝ごはんを食べる。
今日も相変わらずいまいち味がしない。
美味しいのかどうかも分からなかった朝食を嚥下して、重い腰を上げる。
制服のシャツに腕を通して、ボタンを1個1個留めて行く。
ああ、1列づつずれてしまった。私の人生みたいだ。
どこでかえ違えてしまったんだろうか。もう思い出せないや。
スカートを履いて、2回折る。
可愛い子はみんなスカートが短いから、私もスカートを短くすれば可愛くなれるかもしれないと思ったんだ。
なれやしないってわかりきっているのに、もしかしたらという淡い期待が邪魔をする。
7:27、家を出る。
重いリュックと、それより何倍も重い心を背負って駅への道のりをぐだぐだ歩く。
駅までの道が永遠に続いているように感じるほど長い。
いつも乗ってる、前から3両目の2番ドア。
いつものように死んだ顔をしたサラリーマンに紛れて、窮屈な箱の中でガタゴト揺れている。
車窓に映る自分の顔は、表情というものがストンと抜け落ちている。
n回目の朝、いつものように駅へと向かう。
疲れて疲れて、疲れてしまっていた。
愛想を必死に貼り付けた顔面で近所の人に挨拶をしたけれど無視された。
もう、いいかな。
電車が向かってくる。ホームの淵から2歩だけ踏み出してみる。
風景がスローモーションになる。
視界の隅で慌てる人々が見える。
お父さん、お母さん、妹、その他関係者様、最後まで迷惑かけてすいませんでした。
やっと、解放されるんだ。やっと、やっと、やっとやっとやっと、解放される。
ああ、嬉しくて涙が出てきちゃったや。
それではみなさん、さようなら!
良い命日を!
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