第29話 防御は最大の防御なり
犬か狼かなんておれには見分けはつかない。
獣の顔からは鼻先が突き出ていてその下の大きく裂けた口には鋭い牙が生え揃い。
金色の双眸は獲物を捉えて爛々と輝いている。
隆々とした赤い大角の肩当ては節くれて厳つく。
首輪からは黒い棘がビッシリと四方へ伸び。
胸当てには獅子の顔。背中からは大鷲の翼。腰からは外殻で覆われた二本の尾。
黒光りする脚甲は迸る熱気で揺らめいていた。
「ドット絵職人すっげえな!」
画面越しでも漂いまくるラスボス感におれは戦慄を隠せない。
感動すら覚えた。
「よしモノリスマン。おれ達の新装備の力を見せてやろうぜ!」
それはともかく、おれはモノリス装備の性能に興味津々であった。
――――――――――
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] に 18 のダメージ
[ヴィルガルム] は『フィジカルブースト』を使った
[ヴィルガルム] は“戦意高揚”を使った
――――――――――
「モノリスマンの攻撃弱っ! 何やってんの!」
ごめんなさい犯人はおれです。
調子に乗って右手の武器までモノリスにする必要あったのだろうか?
いいや無いね!
普通に武器持たせればいいじゃん!
「そっちもだけど、二回行動ってマジ!?」
うん、ボスですもんね。
おれは少々舐めプが過ぎたらしい。
――――――――――
【ジャージマン】 は『オーラアーマー』を使った
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 はダメージを受けない
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 はダメージを受けない
――――――――――
「フッ、お前の攻撃など蚊ほども効かぬわ!」
モノリスつよい。
おれさいきょう。
「でもなぁ、モノリスマンの攻撃もあまり効いてないんだよなぁ」
うんうん、ボスだけあって耐久力が高い。
あと何回攻撃したら倒せるんだろう?
――――――――――
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] に 28 のダメージ
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 はダメージを受けない
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 はダメージを受けない
――――――――――
やっぱり強いぜ『オーラアーマー』。
たぶんレベル10個分くらい強化されてると勝手に思ってる。
「相手にダメージが与えられて自分が受けないならいつかきっと倒せる!」
こっちは弁当もドリンクもトイレまで完備されてるんだぜ。
つまりマッタリ持久戦を覚悟してるんだよ!
――――――――――
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
[ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 の攻撃
クリティカルヒット!
[ヴィルガルム] に 78 のダメージ
――――――――――
〘罪魔〙[ヴィルガルム]
《どういう事だ。何故キサマは立っていて、何故我輩が膝をついている! あれだけの猛攻を受けていてどうして顔色一つ変えぬ。どうして息を乱さぬ。どうして平然としていられる。我輩は、我輩は〘罪魔〙の一柱なのだぞ? 敗北など決して有り得ぬ……、そんな莫迦な話が有り得てなるものかァッ!》
――――――――――
一定以上のダメージを与えたからだろうか。
ムービーシーンに入って[ヴィルガルム]はボイス付きで語り始めたみたいだ。
おれはスキップしない派なのでじっくり聞きながらお茶を飲んでひと心地。
「やっぱりボスは厚みがあって良い声ですなぁ」
それはともかく、どうしてと言われても困る。
おれの視点からすればアバターには表情差分が無いから、いつでもどこでも精悍な顔つきのまま微動だにしないようにしか見えないんだよね。
選択肢も「はい」か「いいえ」しかないし。
ボスの台詞が見当外れに観えてシュールだわ。
――――――――――
〘罪魔〙[ヴィルガルム]
《何も答えぬか。善かろう、其処まで我輩を愚弄するというのであれば最早キサマに語る言葉は持たぬ。此れより先は我輩の八つ当たりだ。我輩の気が済むまで行われる私刑だ。八つ裂き程度では済まさぬぞ。キサマはただ黙したまま屍を晒せぇッ!》
――――――――――
[ヴィルガルム]の遠吠えが響き渡り、その体躯がメキメキと音を立てながら内側から膨れ上がるようにして一回り大きくなった。
『カッ! ドドドドドドドッ……』
その風貌は更に凶暴さを増し、筋肉は膨れ上がり体毛は太さと鋭さを持っていく。
四つん這いになって獣寄りの形態となった。
ぬるぬる動くCGすっごい。
「いいねぇ、分かってるぅ!」
はい待ってました第二形態!
ですよね、あれで終わるわけがない。
「さあモノリスマン。ここからが本番だ!」
――――――――――
[罪魔獣ヴィルガルム] は“獣神戦吼”を使った
[罪魔獣ヴィルガルム] は『クルーエルペイン』を使った
【ジャージマン】 は『エーテルバリア』で効果を受けない
【ジャージマン】 の攻撃
[罪魔獣ヴィルガルム] に 20 のダメージ
――――――――――
「は、速いっ!」
第二形態となった[罪魔獣ヴィルガルム]は今まで一度たりとも先行を許さなかったジャージマンより先に行動してみせた。
むしろ、おれは今までプレーヤー先制だと思い込んでいた。
「まさか、ジャージマンよりずっと強いのか?」
どうしよう。このダンジョンのレベルが低いと思い込んでたけどボスはそうじゃないのかも。
――――――――――
[罪魔獣ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 はダメージを受けない
[罪魔獣ヴィルガルム] の攻撃
【ジャージマン】 はダメージを受けない
【ジャージマン】 の攻撃
[罪魔獣ヴィルガルム] に 20 のダメージ
――――――――――
セーフ。モノリスパワーで圧倒的セーフ。
おれの目に狂いはなかった。
「フッ、確かにパラメーターは上がったのかも知れないが【monolith】を破壊するには及ばんな!」
おれは自分の物でもない力でマウントを取った。
ごめんなさい。虎の威を借りるくらいしないとおれには無理です。
「よし第二形態も防御力に任せてゴリ押しだぁ!」
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