第9話 ハッソーマッソー




――――――――――


【ジャージマン】 の攻撃

クリティカルヒット!

[???] に 20 のダメージ



[???] を倒した


経験値 を 60 獲得した


『魔石(9等級)』 を手に入れた

『小緑鬼の肉切り包丁』 を手に入れた


――――――――――


【ジャージマン】 のレベルが上がった

新たな 術技 を修得した


――――――――――



「よっし入口に到着ぅ!」


 レベルアップしたけど危なかった。

 最後の戦闘では特殊の『ラッキー』を使って無理やり突破したくらいだ。



――――――――――



【ジャージマン】

HP: 14/ 52(+5)

MP: 15/ 15(+1)

SP: 21/ 32(+3)

LV:  4(+1)

VS: 怪我



特殊:《ラッキー》


術技:“白牙穿”・SP5

  :『リターンホーム』・MP15


装備:ノービスブレイド

  :ノービスアーマー

  :ノービスガントレット

  :ノービスブーツ

  :ノービスマント


道具:ポーション(N)×4



――――――――――


倉庫:魔石(9等級)×2

  :魔石(10等級)×11

  :小緑鬼の肉切り包丁×1

  :黒曜狼の毛皮×1


――――――――――



「ジャージマンにスキルが生えてるじゃないか!」


 たぶん術技はスキルだと思われる。

 合ってるよね?


 “白牙穿”は武器技だろう。SPを使って攻撃するらしい。

 有名な探索者が必殺技名を叫ぶのを動画で何度も観ているので間違いない。


「ジャージマンは必殺技持ちなのか、チクショウ格好良いじゃないか!」


 『リターンホーム』は魔法的なやつ。MPを消費してダンジョン入口前に移動するらしい。

 これでジャージマンの生存率がグッと増す。


「転移スキルって希少なんじゃないっけ。さすがはシミュレーター、分かってるぅ! 主人公には便利スキル持たせてくれるのね」


 ところでジャージマンはダンジョン前が自宅なのだろうか。ちょっと羨ましいぞ。


「ジャージマンは順調なんだよなぁジャージマンは! おれと違って!」


 その後、おれはポーション(N)を一つ使って新スキルを試しに再びケータイのダンジョンへ潜った。

 クエストの報酬がポーションだったので実質タダである。


 ポーション(N)の回復量は[25]。

 “白牙穿”は通常攻撃よりおよそ3割増の強さで、クリティカル発生率がやや高い。

 しかもモーションがおれのやってた構えを反映している。再現度たっけえなオイ!


 『リターンホーム』は発動までに少し時間はかかるけどダンジョン入口のメニュー画面のところまで帰ってこれた。超便利。




◇◆◇




 シミュレーターのジャージマンはおれの状態がリンクしていて反映されるけど、HPとかの自然回復には時間がかかるらしい。

 でも時間と言っても、怪我しても半日で回復するんだからかなり早いんだと思う。

 ポーションでも怪我があっさり治る。さすがはゲーム!


 あと体力を使ったり時間が経つとSPが減る。

 おれが食事を摂ると回復するから満腹度みたいなものだろう。

 SPは自然回復しないらしい。


「今日はリアルダンジョンに潜れなかったなぁ。ジャージマンは疲れてるけど、おれは元気なのに!」


 おれの状態はジャージマンに反映されるけど、ジャージマンの状態はおれに反映されない。

 それ自体は不満じゃないよ?

 ジャージマンが怪我したら現実のおれも怪我したら嫌だし!


「あっ、もしかしておれがもっと筋トレとかしたらジャージマンがパワーアップしたりするのかな?」


 おやおや、もしかしたら攻略法を思いついたのではないかな。

 もし反映されなくてもリアルダンジョン攻略の役に立つし、アリ寄りのアリじゃない?


「よし、今日はジムに寄って筋トレしまくるぜ!」


 会社で働いてた頃は健康のために毎週一回くらいしか通ってなかったけど、探索者になると決めてからは週三ペースで通っている。

 ダンジョンに潜れるようになったら寝る間も惜しんで探索者ライフを満喫するつもりだったけど、入れないんじゃあ仕方ない。


「フッ、どうせならデビュー前にもっと身体を仕上げておけと、そういうことに違いない!」


 おれは協会ビル内にあるトレーニングジムへと急行する。


「待ってろよジャージマン。すぐにハッスルでマッスルしてやるからなぁ! 待ってろよダンジョン。おれのデビューがもっとエクステンドでエクストリームしてやるからなぁ!」


 おれのハートがヒートした。




◇◆◇




――――――――――


【ジャージマン】

HP: 26/ 37

MP:  6/ 13

SP:  2/ 32

LV:  4

VS: 疲労


――――――――――



「ハァハァ……。頑張り、すぎた…、ハァハァ」

「仙道さん勢いだけでやっても効果は薄いですよ」


 調子に乗ってナイスバルクしてたらハンガーノック寸前である。

 ダンジョンに潜れなかった悔しさとか、デビューが先送りになった切なさとか、ジャージマン強化計画とか、おれがマッチョになって女の子にモテモテとか、ジムに来ているスポーティなお姉さんを視界の端に入れたりとか、お姉さんのおヘソを盗み観たりとか、お姉さんスタイル良いなとか、途中から余計な雑念と邪念しか無かった!


「ハァハァ……。これで、明日のデビューでは、ハァハァ……。ムキムキに、なってますかね……?」

「いえ明日は筋肉痛ですね」


 おれはフラフラになりながら鏡の前でトレーニングするお姉さんの隣まで行って、気持ち引き締まった気がする肉体美を鏡に写してポージングする。

 トレーナーさんがポージングの甘い部分をガッシリした手つきで直してくれた。親切。


 ジム内の目立つ場所には有名探索者やボクサーのサイン色紙が飾られている。


「フッ、サインしましょうか?」

「お願いします」


 トレーナーさんは月謝の用紙とボールペンを持ってきた。




◇◆◇



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