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「なんとか……うぷっ、耐え切った……な」

「喋りかけないで吐きそうっ……」


『餡殺の刑』を乗り越えたオレたちは、拷問室の床で動けないでいた。

 当分餡が入ったもんは食べない、マジで……。

 うう……ズボン苦しい早く脱ぎたい。あとここ臭過ぎ、誰かちゃんと掃除しろよ。いや拷問室掃除するやつがどこにおんねん。苦し過ぎてつまらん一人ツッコミしちゃったよあー苦しい、死ぬ。


 にしても、まさか粗相無しで乗り切れるとは思わんかったわ。流石に一回は吐くと思ってた。

 まあ今回は二人だったからな。それにこの拷問、食べ始めは味の重さと脂っこさに絶望するんだけど後半味覚無くなるし、味覚無くなってからは詰め込むだけの作業だから。んで作業になれば今回は楽勝よ、単純に胃袋二倍なんだし。

 ……そう考えると、オレ前回よくこの拷問乗り切ったな……。まあ漏らしはしたんだけど。

 うっ……!思い出したら気持ち悪くなってきた……。他のこと考えよ。


「……タダシと、国王、どこいった?」

「さっき出て行ったわよ話しかけんなっ……」


 ふむ。じゃあ今なら戦略立て放題ってことだな。

 今回学んだことは三つ。


 ・首輪は二人同時に命令できる。

 ・人数増えたとはいえ作戦立てないで突っ込むと死ぬ。

 ・二人になった分前より拷問が楽。


 首輪の件は効果が一つわかっただけだが、かなり重要なことだったので良しとしよう。でもコレについてはもっと知っていく必要がある。すぐには無理だが地道にやっていこう。

 作戦を立てなかったのは今回だけだ。次は完璧で鮮やかな作戦を立ててカッコよく決めてやる。悪魔たちやつらに見つかる前に次の作戦を練らなければ。

 拷問の量が半分になったのはでかい。今までもムッシュが半分請け負ってくれることあったけど、これからはほぼ確実に二人になるからな。今回一番の収穫はこれだ。多少無茶しても耐えられる。


 こんなもんか。

 負傷はしたが、得られたものも大きかった。次はやれる。

 前回のことを思い出したせいで最初は心が折れかけたがもう大丈夫。心強い仲間生け贄も増えたことだし、これで今後屈することはないだろう。

 今は辛いこともたくさんあるだろう。だがしかし!この苦難、この屈辱、この痛みは必ずオレたちを強くしてくれる!……はず!

 そしていつの日か、国王の魔の手から抜け出して、自由を手にしてやる!

 

 よし!さっそく相棒と作戦会議だ!


 


「アルマ!」

「うっさい話しかけんな吐くって言ってんでしょーがっ……!」


 


 …………少し時間を置いてからにしよう。


「話せるようになったら言ってネ……」



 


〜三十分後〜




 

「ふぅ……だいぶ、マシになってきたわね」


 ようやくアルマが復活し会話ができるようになった。

 これ以上会話を拒否られていたら心が折れていたであろう。危ない危ない。


「うっし、じゃあ作戦会議を始めるぞ」

「え、ここでやるの?地上じゃダメ?」

「上じゃどこで誰が聞いてるかわかんないし、ここが一番安全なんだよ」

「なるほどね……。じゃあさっさと始めましょ。ここ臭いがキツくて吐きそう」


 それは同感。ここで吐いたら台無しだからな。手早く済ませよう。

 とりあえずさっき整理した内容をアルマに伝えた。

 

「んで作戦なんだけど――正直作戦なんて立てたことないからなんも思いつかん」

「はぁ!?これまでも突っかかってたんじゃないの!?」

「いや、これにはワケがあって……」

「なによ」

 

「オレ――国王のことあんま知らないんだよね」


「……は?」

「どんな人かは知ってるさ。性格が終わってるとか、暴力に慣れてるとか、猫かぶるのが上手いとかそういうのはな。でも普段あの人が何してるとか、行動パターン?を知らないんだよ。だから作戦の立てようがない」


 オレ一応団長だし、割と仕事多いんよ。粗探しする暇がない。


「そんなんでよく今まで反抗してたわね」

「いやぁ」

「褒めてないわよ」


 でもこればっかりはしょうがない。

 仕事しなかったらそれはそれでボコられるし、抜け出そうとしても周りの奴らに見つかってチクられるしで余裕がなかったのだ。


「そう言うお前はどうなんだよ。一応暗殺企ててたんだろ?何かしら調べたんじゃねーの?」

「まあ調べたけど……」

「けど?」

「速攻でカタをつけるつもりだったから、国王が城にいる時間くらいしか調べてない……」


 ………………。


「お前よくそんなんでオレのこと責められたな」

「仕方ないじゃない!元々は部外者なのよ?内部事情はあんたら騎士が邪魔で調べられなかったの!」

 

 それは確かに。

 まあ普通部外者が国王のこと嗅ぎ回ってたら排除するわな。オレは見逃すかもだけど。


「それに爆殺する予定だったから詳しく調べなくても割とヤれるかなーって……」

「ヤれるかなー、じゃねえわ。殺れねえよなにかわいこぶってんだ可愛くねえんだよ、胸付け足して出直してこい」

「はい殺す今殺す!!あんた胸の事その話題出すからには命かけなさいよ!?」


 二人同時に勢いよく立ち上がる!

 二人同時に気持ち悪くなって座り込む!


「こ、今回は見逃してあげるわ。命拾いしたわね……」

「こ、こっちのセリフだ……うぷっ」


 こんなことしてる場合じゃねぇ。さっさと話をまとめよう。

 ……あれ?まとめるような話し出たっけ?


「え、じゃあオレら、ターゲットのこと何も知らないってこと?」

「そうなるわね」


 やる気なさすぎだろ舐めてんのか。


「チッ、しゃーねぇ。とりあえず当分は身辺調査に時間を使うぞ。面倒だけど」

「そうね。面倒だけど」


 オレが言うのもなんだけど、こいつ大雑把がすぎるだろ。不器用なおっさんくらい雑だぞ、女子力どこいった。

 まあ見た通りか。“お淑やか“とか“花のような“なんて表現はこいつからは微塵も感じられんしな。


「その目線ムカつくんだけど。こっち見ないでくれる?目ん玉潰すわよ?」

「そういうところだぞ」


 この野蛮人は放っておこう。多分もう手遅れだ。


「いいからさっさと作戦立てるぞ。身辺調査すんのも楽じゃねえんだ」

「そうね。とりあえずお互い仕事を抜けられそうな時間を挙げていくわよ。二人で協力すれば抜け出す時間も作れるでしょ」


 やっと作戦会議らしくなってきたな。

 この調子で進めてくぞ。


「よし――まずは自分の仕事を思い出すところからだな」

 

「…………先が思いやられるわね」

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ドメスティック・バイオレンス・ランド ホロホロ @horohoro2552

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