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「で?これはどういうことじゃ?」


「「コイツがやろうって言ったんですッ!!」」


 前略、同盟結成翌日に捕まりました。

 二人して無様に執務室の床に転がっています。


「バカじゃないのっ?バカじゃないのっ!?なんで正面突破なのよ!?こうなるに決まってるじゃない!?」

「二人同時に命令はできないと思ったんだよ!あとお前も同意してついてきたんだから文句言うな!」

「『オレに任せろ』としか言われてないわよ!?そんな根拠のない作戦で突っ込んだのっ?バカなの!?」


 これを信用した私がバカだった。

 最低限作戦内容は聞いておくべきなのに、長年この立場にいると自信満々に言うものだから、何か必勝法があるのだと思い込んでしまった……!


「茶番は終わりでええか?なかったらこのまま拷問に移るけど……」

「「コイツ渡すんで私(オレ)は見逃してくださいッ!!」」

「清々しいほどのクズっぷり。俺が言うのもなんじゃが、もう少しこう、思いやりとか情とか持ってないんか?」

「それがあれば刑罰が軽くなりますか?」

「いや別に」

「じゃあこのバカに持つ情なんてありません」

「バカとはなんだこのクソアマ!?」

「うっさいバーカ!誰があんたのためなんかに命かけるもんですか!自分の命優先に決まってるでしょ!?」

「信頼度ゼロで草」


 信頼そんなものは今捨てました。そこの床に置いてありますよよかったらどうぞ。

 そんなことより早く逃げなくちゃ……!とりあえずこの縄を解いて…………くっ、びくともしないわね。どんな結び方してんのよ……!


「さて、俺も忙しいからのう。さっさと執行しよか」


 国王が指を弾く。

 すると入り口から副団長タダシが現れた。

 後ろには彼の身体を優に越すほどの巨大な袋が鎮座している。なにあれ?



「今回の罰は暗殺に失敗したと言うことで――『餡殺の刑』にすることにしました〜」



『餡殺』?なんだろう、聞いたことないけど……。


「嫌だぁぁぁぁぁぁ!?あれはやだぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 私が疑問符を浮かべていると、隣で転がっているカーニスが暴れ出した!

 なに!?そんなにやばいのあれ!?


「ああ、アルマは初めてじゃったのう。まあやることは単純じゃ。――この袋に詰まってる餡を二人だけで食べきってもらう」


 ………………え?

 待って待って待って?あの量を?二人で?

 副団長の倍くらいの高さあるんだけど。横幅も相当あるんだけど。冗談よね?


「あはは〜、国王様も人が悪い。あんな量二人で食べ切れるわけが……」

「大丈夫大丈夫、タダシが詰め込んでくれるから」

「いや、物理的に入らな……」

「大丈夫大丈夫、胃って意外と膨らむから」

「そんな詰めたら出ちゃう……」

「大丈夫大丈夫、出たものもちゃんと詰めるから。消化するまで待つから」

「出すの前提じゃない!イヤッ!人前でそんな醜態晒したくない!?」


 花の乙女になんて仕打ちを……!

 どういう思考回路をしていたらこんな残酷なことを思いつけるのだろうか。常人とはクズ度合いが違う。

 やっぱりこの団長にしてこの国王ありね。どっちも死ねばいいと思うわ。


「大丈夫大丈夫、見るのはここにいる三人だけじゃ」

「何も大丈夫じゃないわよ!?全てがアウト!」


 まずいまずいまずい……!?

 あんな量食べたら絶対出る。あらゆる穴から餡を撒き散らすことになっちゃう!?


「安心しぃ。今日は初めてじゃけぇな。処理係は無しにしちゃるわ」

「処理係っ?」


 また知らない単語が。

 不安しかないんだけど……。

 説明を求めて横にいるカーニスの方を向くと、歯を震わせながら語り始めた。

 

「……オレが前やられた時、連れ込んだ女スパイに食わされるところ全部見られて、今度は女スパイがオレの、オレのぉ…………うっ、オロロロロロロロロ」


 ………………。


「あの、本当にやめません?」

「処理係追加するぞ国賊」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいそれだけはやめて!?」


 カーニスから聞かされた話は肝心な部分がわからなかったが、私の心を折るには十分だった。

 話している本人も恐怖で言動が少々おかしくなっている。当時の光景がフラッシュバックしているのか吐いてるし、さっきから意味不明な言動を繰り返していた。


 ……これが私の末路かぁ。

 うん、これ以上刑が重くなったら心が持たない。さっさと降伏しよう。

 

 私は全てを諦め、憂いを帯びた顔で告げた。


「お母さんごめんなさい。もうお嫁に行けません」

「アルマも壊れたか」


 ……シテ。はやくコロシテ。


「そんなに嫌なら出すの我慢すればええじゃろ。餡食うだけでいいんじゃ、気合いで耐えろ」


 ……確かに。

 勝手に絶望していたわ。そうよ、出さなければいいだけじゃない!

 それさえ我慢すればただ食べるだけの刑罰、しかも処理係とやらはいない!


「カーニス、私たち、まだ負けてないわよ」

「アルマ……」


 絶望したカーニスの顔をなんとか上げさせる。

 こんなところで終わらない、終わらせない!

 私は国王を殺して、自由を手にするんだ!


 私の目に火が灯る。

 一縷の希望を心の支えに、私は立ち上がった。



 その光はあまりにもか細く頼りない。それでも掴んで見せる!栄光の未来を!



「さぁ、早く食べ行きましょう副団長。この試練――耐えてみせますよ!」

「格好つけているところ悪いが、一応お前犯罪者だからな?猛省しろ」


 私たちは部屋から踏み出し、拷問室へと向かった――!

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