序章 君と出会うまでの数時間
第1話
『キャラの種族を選んでください』
『色んな子を育成するのだ!!』というあまりにも奇妙な名前のゲームをやり始めた。
好きな配信者がやっているのを見たのが興味を持った原因であるけれどプレイ前に仕入れた事前情報によると
『開発責任者が色物すぎる』
『ネーミングセンスww』
『ゲーム自体は面白いけどね?』
そして最も重要な点として、ゲームの名前の通りNPCを育てるのがゲームの根幹としてあるのだがNPCの育てる手間暇、死亡ペナルティが重いことなどを理由に多くのプレイヤーは自分自身が使う身体を育成し始めたことがある。
プレイヤーは死亡ペナルティが無いこと、自分で戦う方が楽しいと思う人が多いこと、種族、職業をいつでも変えようと思えば変えられることなどが理由としてあるらしい。
「なんだそれ?」と思わずにいられない情報ばかりであったがゆえについつい値段も見ずに購入してしまった。
そして現在『色んな子を育成するのだ!!』のVR世界のなかで初めてのキャラ育成を始めたのである。
「種族は…………」
このゲームを始める切っ掛けとなった配信者は数少ない真っ当にNPCを育てている人だったので育成の基礎知識は既に得ている。
まずはじめに選ぶのは『種族』である。
説明すると……説明するまでもなくキャラの種族を決めるだけだ。
ただしこのゲームではそう単純なものでもない。
というのも初期に選べる種族が莫大に存在するのである。
スライムやゴブリンなど誰もが知るファンタジー生物に加えて、『ドドンゴ』『フプラプテ』『ロロローロローロロ』など名前からは姿を想像も出来ないオリジナル種族もあり、更にはドラゴンのような他ゲームでは絶対初期では選べないだろう種族まで、あらゆる種族を進化前の基本種であれば選ぶことが出来るのである。
「まぁ、選ぶのは『人間』なんだけど」
かなりひよった選択に思われるかも知れないがきちんと理由はある。
まず職業の自由度が大きいから。
職業は種族と同じくキャラの強さに密接に関係するが、種族がHP、STRなどの身体能力の高さにつながる一方、職業はキャラの持つスキルに関連する。
例えば剣士なら剣術のスキルを、魔術師なら魔術のスキルを、といった具合であり、無職だと何の倍率も係らない攻撃も適切な職業につけば一気に火力が上がるのだ。
また職業を組み合わせることによって新たなスキルやコンボを得たり見つけたりすることができる。
そういう訳で職業というシステムもキャラの種族と同じくらい重要なのだ。
そして職業も種族同様に基本職であれば初期の時点でどれでも選ぶことができる。が、しかしその一方で就ける職業には一定の制限が付くのである。
スライムは剣を持てないために剣士になれないようにキャラの種族が制限をかける場合、剣士であるために身体能力が皆無である必要がある職業『ニート』には就けないようにキャラの職業が制限をかける場合、更にはキャラの才能という隠しステータスが影響し制限をかける場合など中々思い通りには出来ないのだ。
話を戻して種族に人間を選んだのは、この職業の制限が他種族と比べて緩いために職業のビルドが簡単で初心者に優しい、というのを聞いたためである。
チュートリアルだと思って育成してみるつもりだ。
「次がモデリングね……」
キャラの種族を選ぶとキャラのモデルが現れる。男子女子それぞれに幼児モデル、大人モデル、老人モデルなど様々なものが現れたが、何も考えずに真っ先に二十代くらいの女性のモデルを選んだ。
今度はその選んだモデルと共に詳細なパーツ変形のためのUIが表示される。
「ふふふっ……」
……あくまでも私は初心者に優しいという理由が最たるものとして人間を選んだのである。
決して人型の種族のキャラを選んだ際のモデリングが自由に行えるという副次特典のために選んだわけではない。
あくまでも配信者さんがお勧めしていたのを選んだのである。
決して私の趣味をぶちこんだ女の子のキャラを作りたかったとかではないのである。
決して配信にてキャラのAIは学習機能があるみたいできちんと教えて体験させてあげるとわりといい動きが出来るようになると言っていたのを聞いて、それじゃあ好きな見た目の人に私みたいなオタク女子をブヒブヒさせる言動もさせることが出来るのではと思い付いてしまったわけではないのである。
「とりあえず、金髪ショートでイケメンな中性的な感じでつり目で目の色は水色で顔の輪郭はいじると違和感出るかもだから元々の黄金比利用して、あ、声も選べるんだ声はどちらかというと低めじゃなくて少し可愛い感じがいいな、胸はでかい方がいいかな中性的な見た目とのギャップを出す感じで身体のバランスもあんまり弄んないで身長は、うん、これだね、顎クイされたときに顔との距離数センチなれる完璧な身長差、ふへへっ完璧。大まかなところはこれで良いとしてまつげ眉毛耳の形目の大きさの微調整エトセトラエトセトラ……腕が鳴るなぁ」
こうしてモデリングにたっぷり一時間はかけたが。
決して、決して不埒な思いが一番の理由でこのゲームを始めた訳ではないのである!
そこを気を付けて貰いたいところである!
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