第8話
思い出すのはルナを生み出す前、『色んな子を育成するのだ!!』を始めて一番最初、私自身のキャラメイクをした時のこと。
プレイヤーのキャラメイクにはマニュアル作成とランダム作成の二種類がある。
マニュアルではNPCを作るときとほぼ同じで外見から性別、職業、名前を決められるが、唯一異なるのが種族が人間で固定されているという部分である。
一方でランダム作成は全て完全にランダムとなるが種族が人間以外になることが多いという、最初から人外プレイをすることができる利点がある。
であるが、私はそんなことはどうでもよく、とにかく早くNPCのキャラメイクをしたかったのでランダム作成を選んだ。
そして完成した状態をよく確認することもなくNPC作成へと移っていってしまったのだ。
画面に表示されていた『キャラメイクはワガハイが担当したのだ!!』という文の意味をよく考えることもなく……
「あのロリガキ社長……」
やりやがったな。
ガキンチョでもやって良いことと悪いことはあるんだぞ?
なんやねん『美少女狩り』て。
海賊狩りと違うねんぞ。
しかも女の子ハンターて、私は現実で女の子をハントできないからゲームで女の子と触れあってるんだぞ、このヤロウ。
舐めとんのか?
「手数料、お二人様分で2000G頂いても宜しいでしょうか」
「ご主人?ほら、手数料だって」
「あ、うっ、はい」
……物思いに耽りすぎたみたいだ。
ルナもクソガキ社長の機械から組合員証を取り出し終わっている。
えっと確か、お金は前にインベントリを見たときそこに入っていたはず。
「はい、お願いします」
インベントリから2000Gを取り出すと金貨が二枚、手の中に現れる。
それをお姉さんに手渡した。
「2000G、確かに受け取りました」
お姉さんに渡した金貨は数秒後に消えていった。
おそらくインベントリに回収したのだろう。
「それでは買い取りさせていただく素材を見せてもらっても宜しいでしょうか」
「ん?あっ、はい」
そうか、クソガキ社長への怒りで忘れかけていたがアイテムを買い取ってもらいに来たのだった。
今持っているのはモンスターの素材だとスライムの核のやつとゴブリンの角、混紡が沢山、フォレストウルフの毛皮が三つ。
拾った植物類は色んな草とキノコと木の実とか。
……植物と毛皮は全部残しておいて、ゴブリンとスライムの素材は二個ずつ残して全て売ることにする。
毛皮については三時間の散策で遭遇が一回だけだったことから再度入手しようとしたとき面倒なことになるかもしれないから。
植物系は私の職業が薬師だったことが判明したから。
ゴブリンとスライムは再度入手するのが簡単そうなので一応二つだけ残して全て売る。
「えっと、これでお願いします」
「かしこまりました」
インベントリから出したアイテムが机の上にポロポロと落ちていく。
「査定を致します」
そう言うとお姉さんは眼鏡をかける。
おそらく私の鑑定のモノクルと同じ類のものなのだろう。
一つ一つ眼鏡越しに査定していき最後の一つを見終わるとお姉さんは眼鏡を外し、いくつかの貨幣をインベントリから取り出した。
「査定結果は合計で48G、詳細といたしましてはゴブリンの角九つが27G、混紡八つが8G、スライムの中枢核11個が11Gとなっております。こちらをどうぞ」
「えっと……はい」
48G、まさかの二桁。
ドラゴンのクエスト、序盤くらいの金銭感覚。
ちらりとルナの方を見るも特に驚いている様子もないから正当な値段なのかな、分からん、多分大丈夫だと思うけど……
「またのご利用お待ちしております」
「あ、ありがとうございました」
すでに椅子から立ち上がってお辞儀をするお姉さんに疑念をぶつけるわけにもいかずこちらからもお礼を言ってから、ルナと連れ立って外に出る。
外に出た後すぐに聞いた。
「あの、よ、48Gって、ぼられてない、ですか?」
「そう?それくらいで妥当だと思ったけど」
「そ、そうなんですか?あの、48Gって、何、買えますか?」
「うーん、食堂とかのご飯で大体二食分くらいかな。食べ物じゃなかったら、そうだね、なんだろ、薬草由来の塗り薬一回分がギリギリ買えるか買えないかくらい?」
「へ、へぇ……」
よく分からないけど、1G20円くらいなのかな。
ご飯一食500円と考えたらそのくらいになるけど、この世界での価値観が分からないから、1G10~50円があり得そうな範囲かな。
……だとしたら初心者ログインボーナスで貰った十万Gってかなりの大金なのでは?
大体、百万から五百万円?
それに組合の登録料で1000Gって一万から五万円取られてたってことになるのか?
安いものはとことん安いけど高いものは高い、っていう感じなのかな。
「あっ、ほら!あの屋台の焼き鳥は一本3Gだよ」
「えっ」
焼き鳥3G?
まさかの一桁G。
さっきのルナの口振りからしても食べ物系統はかなり安いのか。
……でも値段の低さに依らず、すごい美味しそう。
丁度良い焦げ具合のカリカリな鶏皮をまとった鳥串。
炭火で熱せられて鶏肉から溢れた脂がパチパチっと弾ける音。
周囲にところ構わず撒き散らす、炭と肉と脂の混じったいい匂い。
三つの感覚からの情報に口がもう焼き鳥を食べたと錯覚したのかと思うほど、大量のよだれが口の中に溢れてくる。
一気にごくりと唾を飲み込んだ。
見ればルナも物欲しそうに屋台を見つめている。
「た、食べよ……ませんか?」
「うん!そうしよそうしよ!」
……意外と幼いところもあるんだな。
「ご主人は何本食べる?」
「えっと、三本、くらい?」
「えぇ、それだけ?体弱っちゃうよ?」
「うっ、え、じゃぁ、五本食べ、ます、たぶん」
「ふぅーん……ボクは十本は食べれるよ」
「えっ」
「ハハッ、ウソウソ。ほんとは十五本は食べれるけどね」
「えっ?」
「え?」
プレイヤーの方が強くなれてしまうNPC育成ゲームで真っ当に(?)キャラの育成を楽しみます! 森野熊次郎 @KUMAGIRO23
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