閑話


「……う……ん?」


 いと尊き存在が私に膝枕をしてくれているという極楽浄土を模したかのような素晴らしい光景はいつの間にか移り変わり、見慣れた光景になった。


 頭に着けたヘルメットのようなVR機器の、半透明のカバーガラスを通して見える現実世界の私の部屋だ。


 ただ今日は何やら様子が違った。


 けたたましい音が部屋に鳴り響いているのだ。


 音源は頭のVR機器である。


 即座にそれを頭から取り外した。


「……緊急停止?なん……うぇ……?」


 どこかぼーっとした感じが残るまま手に取った機器を調べると機能の緊急停止を知らせるハザードランプが点滅し音を鳴らしていた。


 何でだろうと考えていたら気付いた。


 VR機器の内側に血が滴っていた。


「えっ……あっ、鼻血。良かっ……いや、良くない」


 拭かなきゃ……って、うわ、服にも!?


 ヤバいヤバいヤバい、えと、ティッシュティッシュ……


「おい、姉ちゃん?入るよ。母さん『またゲームずっとして』って怒って……」

「あ」

「え?」


 ノックの後すぐ部屋に入ってきた弟と目が合う。


「え、なっ、ど、大丈……」

「あぁ、助け、ごふっ!?」


 上向いて喋ったら鼻血が喉伝って口から出てきた。


 うわぁ、被害範囲がカーペットにも……


「だっ、わっ、か、母さん!?ヤバい!!姉ちゃんがゾンビになってる!!」

「ちょっ……なんで逃げ」


 あぁあ、どうすんのこれ、収拾つかなくなってるよ。


 なんか下からお母さんたちの悲鳴が聞こえるし。


 ……なんか、もういいや。


 私はこのまま横になってお母さんたちの救援を待とう。


「……はぁ」

 

 ルナ、凄かったな……


 うん、肌の感触がすごい生っぽくて、えっちだった。


 いつでもあんな女の子を近くで拝めるとか最高か?


 このゲーム買って良かったな。部長とかにもおすすめしたい。


 あぁ、興奮したらまたなんか鼻血出てきちゃった。

 


 

 

 


 

 

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