第3話 涙は、いつか思い出に変わる。


学級委員長の安斎さんを大樹が

手伝うようになってから2人の距離は

急速に縮まった。


大樹と安斎さんの仲睦まじげな様子を見て

本来あそこにいるのはあたしなのにと

やさぐれたい気分になる。


でも、年頃の幼馴染同士の距離感は

普通こんなものだろうと思ったりもする。


大樹を見つめる安斎さんの頰が

朱色に染まっているのに

気づいたときは複雑だったな。


心が引き裂かれるようなそんな感覚がしたけど

気のせいだって心に嘘をつきながら

友人達と笑い合っていた。


季節が夏から秋へと変わる頃

2人は恋人同士になった。


「安斎さんと付き合うことになった」


「へぇー、良かったじゃん。おめでとう」


精一杯の笑顔を浮かべて、

祝福の言葉を紡ぐけど心の中では

暗い感情が渦を巻いていた。


だけど、あんたには

幸せでいて欲しいからあたしはずっと

あんたの幼馴染でいることを選ぶよ。


ほら、今日も

何気ない会話をして笑い合って。


彼女にはなれなくてもそんな毎日が

あたしは好きだから。


夜空を見上げると宝石を砕いて散りばめたみたいな

たくさんの星々が煌めいていた。


あたしは輝く星にはなれない星屑。

だけど、この想いがいつか思い出として

変わってくれるならきっとあたしは

輝けることだろう。


「さよなら、あたしの恋」


微笑むあたしの頬を流れるのはきっと

流れ星に違いない。










(終わり)

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星屑のようなウサギの恋 藤川みはな @0001117_87205

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