第2話 どんなに辛くとも君の幸せを願う。


あれから1週間。

大樹と安斎さんとの仲は進展していなかった。


「あんたねぇ、いつまで

ウジウジしてるつもりなのよ」


ため息混じりに言うと大樹はムッとした顔になる。


「仕方ないじゃんか!

安斎さんと接点特にないし……」


早くこの気持ちに決着をつけたいのに。


「あんたはこのままでいいの?

自分の気持ち、伝えないまま

後悔するようなことになってもいいの?」


「それは……」


早く、この苦しい気持ちから楽になりたい。


「早く終わらせてよ……」


「わっ!!」

大樹の声が聞こえたかと思うと

プリントが宙を舞った。


「あぁっ!! ごめんなさいっ!!」


何度も頭を下げる女子は安斎さんだった。

大樹の顔がボッと赤くなり笑顔を浮かべる。


「いやいやいや!全然大丈夫!!

気にしないで!!」


そう言ってプリントを拾うのを手伝う。

あたしも足元のプリントを拾い彼女に差し出した。


「ありがとうございます」


可憐な笑顔を見せる安斎さんは

大樹からもプリントを受け取り

同じようにお礼を言うとそそくさと走り去って

行ってしまった。


そういえば、安斎さんは学級委員長だったっけ。


「学級委員長の安斎さんを手伝えば

接点つくれるんじゃない?」


大樹はわざとらしくも見えるハッとした

表情を浮かべた。


「確かに!」


「それ、わざとやってんの?」


「いや、至って真面目だけど……」


「……とにかく、行動あるのみ!!

ほら、安斎さん追いかけな」


「えぇっ! 早速?!」


あたしはモタモタしている大樹の背中を

勢いよく押した。


「わっ」


振り返った大樹に親指を突き立てる。

大樹は困ったように笑いながらも

あたしに背を向け

「安斎さーーん!!」と彼女を追いかけていった。


どうか、うまくいきますように。


でも、片思いの相手の恋を応援するって

想像以上に苦しいんだな。

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