第1章 第2話 人形の館
前回までのあらすじ
オーレンで装備を新調するため、武器屋に寄った音也たち
そこで八重桜という着物を貰い装備すると音也が装備可能なサイズになった
武器屋の奥に眠る日本刀を発見し、音也はこの刀を欲しがるも武器屋の店主に拒否されてしまった
代わりの刀を購入し、宿へ向かった
1人夜中に歩いているとアルゼス教団・妖魔軍のアニスと対峙する
魅了や毒などの厄介な状態異常をばらまき、音也は不利になるが武器屋にあった刀・ムラマサが音也の前に突然現れる
ムラマサによって毒も解毒されアニスを真っ二つにした
そして音也はムラマサが何年も自分を待っていたことを知る
音也がアニスを倒した翌日
しばらくオーレンを拠点とするため、物資を買っているときだった
「すまんが武器屋に行ってくる」
「え?でも武器屋は昨日…」
「お前は勇者の腰にある刀が見えないのか?」
音也はそう言い、武器屋へと向かった
その腰には村正がかかっている
サーシャとカトレアは相変わらず喧嘩をしている
アランが止めに入るも止まる気配は無い
音也は武器屋に入っていく
そして店主に声をかけると
「こんにちは」
「…わざわざ来てくれてありがとうな
もうわかってるよ
ムラマサは返さなくていい
ムラマサは使い手を選ぶ、あんちゃんは選ばれたんだよ」
店主はパイプをふかしながら言う
「そう…ですか
わかりました
お兄さんの形見大切に使わせてもらいます」
「ひとつ聞かせてくれ
ムラマサが選んだ人間、あんちゃんの名前聞かせてくれねぇか?」
「音也…相良 音也です」
店主は驚いた顔をしている
音也の顔を見て少し考え事をした後、話し始める
「相良 音也か…いい名前だな
兄貴のムラマサ大事に使ってくれよ」
「ありがとうございます
ムラマサ大切に使わせていただきます
仲間たちも待っているので俺はこれで」
音也が去っていったあと店主は1人呟く
「相良 十蔵の孫か…そりゃあムラマサが選ぶわけだ
そうだろ?兄貴…」
音也が皆のところに戻るまで時間はそうかからなかった
サーシャとカトレアの喧嘩はカトレアの勝ちで終わっていた
外傷は無いので既にヒールレインで治療した後だろう
アランが口を開く
「お前らは喧嘩しないとダメなのか?」
「ダメだな」
「この将軍様はわからせないと!」
アランは頭を抱えている反省どころかお互いにまだやる気なのだ
「まぁその辺にしとこう」
音也はカトレアとサーシャにそう言う
「お前がそう言うのなら…」
カトレアは少し照れながら音也の言う通りに喧嘩をやめた
「ちょっとー!何よそれ!
今までそんなムーブしなかったくせに!
勇者様の前だと急に女の子みたいな顔して!」
サーシャは駄々っ子のように地面でドタバタしている
幸い人通りが少ない時間で良かったが少し注目はされた
-数分後-
アランがため息を吐くとサーシャに言う
「さすがにあれは恥ずかしいぜ…」
サーシャは顔を真っ赤にしながら俯いている
音也とカトレアは道具屋に行って、物資の調達と情報収集をしている
サーシャが口を開き、アランに言う
「そうですけど、あれは仕方ないというか」
「あれは擁護できないな」
アランとサーシャはお互いに少し言い合ってる
カトレアとの喧嘩とは違い、終始穏やかだが
少しすると音也とカトレアが戻ってきた
その手には地図が握られておりオーレンから離れた館が記されていた
没落した貴族の館、そこは人形が住まう館として心霊スポットのようになっていた
しかし誰も怪我もしないし向かった人間は無事であることから無害な場所になっていた
それを聞いた音也は調査することにしたとアランとサーシャに伝えた
しかしサーシャは
「ゴースト!?無理無理無理!
お化け無理!」
「えぇ…」
「この前屍鬼軍と戦った時は平気だったじゃないか」
アランと音也が驚いている
屍鬼軍は平気だったのになぜ今ダメなのかと
しかし、カトレアはサーシャを引っ張り連れていく
アランと音也は顔を見合せ苦笑いをする
そして…
森を抜け、没落貴族の館へと着く
道中は魔物も出ず非常に楽な道であった
それにオーレンから歩いて数十分で着くほど近い
「もう早く行って早く終わらせたいので行きましょう!」
サーシャがそう言ってドアに手をかけようとした時、音也がサーシャを引っ張る
「え?勇者様なんで?」
「糸だ」
ドアには無数の糸がかけられていた
ただその糸は緩くかけられており切れるということは無いだろうが
それでも侵入者避けのトラップだろう
音也がムラマサで切り裂くとドアを開けることが出来る
そこを開けると無数の人形がいる
しかし手入れされていて古びた様子は無い
「さて、人形が無数にあるなこの館は
手入れは丁寧にされているからまるで人が住んでるようだな」
「だな〜、なんでこんな綺麗なのかね」
音也とアランは話しながら館を探索している
残ったのはカトレアとサーシャだけでカトレアは食堂を探索しようと思っていたところサーシャに肩を掴まれた
「何だ?肩を掴むな
私は食堂を調べるんだ」
「ぜっっっったいに1人にしないで!
怖いのすごく!」
「あ、あぁ、そうか…わかった」
さすがのカトレアもこのサーシャの気迫には勝てなかった
2人が食堂を調べると広いがそれ以外は特になんの変哲ももない食堂だということがわかる
しかし奇妙なところがあるとすれば常に綺麗に並んでいる食器と作りたてであろう料理
パンは焼きたての良い香りがするし、パンとスープは湯気が出ている
まるで先程まで誰かが作っていたのだろうということになる
「まるで今作ったかのようだな
それにこの館、蜘蛛の巣や埃がひとつもない
毎日誰かが掃除しているかのようだな」
「コワイコトイワナイデ!」
「お前がいちばん怖いぞ」
サーシャはカタコトになっている
カトレアはすかさずサーシャにつっこむが当のサーシャはガタガタ震えている
外観の割に綺麗な館に対しての感想ですらサーシャは怖いと言ってガタガタ震えているもし魔物が襲いかかってきてもこの調子では戦えないだろう
カトレアはため息を吐くとサーシャと手を繋ぎ音也たちとは反対方向の書斎へと向かう
-Side 音也-
音也が向かったのはこの館で一番広い部屋だ
それは館の主の実験室でここは魔術人形を作っていたようだった
「やはりな、この人形の数は魔術人形を作っていたのか
例え失敗しても捨てずにここまで大切に」
「執念か何なんだろうなこれ」
アランがそう呟くと絵が見える
実験室なのに絵という不釣り合いな物
そしてその絵はどこか哀愁が漂う白髪の少女、皮膚は白く先天的なアルビノのようであった
「まさかこの少女を人形として作ろうとしたんじゃないか?
だがそれは…」
「そうよ」
音也がそこまで言った時、少女の声が聞こえた
少女は黒いドレスと白髪の後ろで結んだ低めのツインテールという姿だった
「私を創った人は死んでしまったけれど私は人間だった頃、体が弱くて死んでしまったの」
「この絵の子は君だということか?」
音也がそう言うと少女は頷く
この少女には人形特有の球体関節は無い
まるで人間のような、と言うより人間そのものだ
周りには人形が飛んでいるこの少女が操っているものだろう
しかし、ここまで人に近づくとは禁忌では無いのだろうか?
「ええ、だからリックは亡くなったの
禁忌に触れてしまったから
いかに天才といえど理には逆らえない
それが人間であれば尚更」
リックというのはこの少女の人形を創った人間ということだろう
彼女は冷たく言い放ったようだがその瞳には涙が溢れていた
徐々に悲しみが溢れた表情になる
彼女にとっては大切でかけがえのない人
自分を生き返らせるために亡くしてしまった人
それは彼女にとって最も辛く最も大切な思い出であることは変わりないのだから
「なぁ、あんたもし良かったら旅に出ないか?
音也もいいよな?」
「ああ、俺は構わん」
アランは少女にそう聞くと
少女は人形に傘とカバンを取りに行かせる
そして、少女は黒い傘とカバンを持つと
「私は魔導人形のシャルロット
貴方たちの旅に同行させて
世界を見たいの」
シャルロットがそう言いながら音也の手を取ろうとした時
「おっと、それはいけませんねぇ
貴女はここで破壊の使徒へとなってもらわねば」
どこからともなく声が聞こえてくる
そしてシャルロットに糸が巻き付く
まるで操り人形のように
「な、なんでこんな…」
「なんでこんな?簡単です
私が人形遣いだからですよ」
突然現れた男はシャルロットに糸を巻き付け操り人形のようにした
男の姿は白いスーツを着てシルクハットを被り、髪は黒髪というシャルロットとは真逆のような色だった
「お前は誰だ?」
音也がそう聞くと男は答えた
「アルゼス教団・妖魔軍幹部
ドールマスター・チェスターと申します」
第2話 人形の館 End
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