第5話 魔獣の姿
前回までのあらすじ
トランに向かう途中、アランから終極の魔神について聞かされ、アルゼス教団の教祖・ベルーガと戦闘をした音也たち
ナオとサーシャが攻撃するもほぼ無傷であったが、そのその真の目的は音也の[[rb:魔装 > クロス]]完成のために全員で時間稼ぎをすることだった
音也は時間を稼いでもらったことによりフェアリークロスを完成させ、ベルーガの手足を吹き飛ばすほどの重症を与え、撤退させた
しかし、時間稼ぎの代償としてナオとサーシャが治療を受けさせなければならないほどの怪我をしてしまう
音也たちはトランへと急ぎ向かうこととなった
-アルゼス教団魔教会-
ベルーガは椅子に座り、傷を癒していた
サーシャから受けた傷はほとんど治っているのに音也から受けた傷はほとんど治っていない
右手が再生しかかっているくらいだ
(…あの青年はまさしく勇者と呼んでいい存在だった
我が神に強化していただいた肉体もまだ完全には治らない
人間にもあそこまでの者がいたとは…)
ベルーガが考えている時に後方から声がする
「ほっほっほ、こっぴどくやられましたなぁ
ベルーガ様」
「…その声はフォデラルですか
勇者の力に敗れた私を笑いに来たのですか?」
「いえいえ、ベルーガ様にそのようなことはいたしませんよ
我が神からお言葉があると伝えに参上したまでです」
フォデラルと呼ばれた梟と人間を足したような魔族はベルーガに伝えに来ただけという
そして、その直後にベルーガとフォデラルの頭に直接声が響く
「ベルーガ、フォデラルよ
責務を果たした貴様らを賞賛しよう」
「ほほっ!この賢将・フォデラル
ただベルーガ様をこの魔教会まで転送したまでです
大したことはしておりません」
フォデラルは謙虚そうに言うが、その態度は少し恩着せがましくも聞こえる
「ベルーガは我の大切な部下、ここで死なせるには惜しいのだ
故にフォデラル、貴様に任せたのだ」
「ほほっ!バアル様からお褒めの言葉をいただけるとは
ほっほっほっ、今日は良い夢が見れそうですなぁ」
フォデラルは本気で喜んでいるのだろう
先程の恩着せがましい態度はなくなっていた
「感謝いたします
我が神バアル様!
しかし、私は勇者を倒すことが出来ず失敗に終わってしまいました」
「善い、たとえ敗北したとて勇者の力を見たのだろう?
それだけで十分な成果ではないか
その失敗も我は評価する」
「はっ!勿体なきお言葉」
ベルーガは深々と頭を下げる
それに続きバアルが話す
「ベルーガよ、次の任務に励むが良い
そのための教祖なのだ」
「承知いたしました!」
ベルーガは治った右手を挙げ、フォデラルに伝える
「フォデラル、賢将軍の精鋭を勇者の元に送りなさい!
私も魔教会から精鋭を送り込みます」
「ほっほっほっ!本気のようですなぁ
よろしい、ベルーガ様のために我が軍の精鋭を送りましょう
ほほっ!」
-トラン付近の畑-
音也たちはベルーガとの戦いの後、トランはもう目の前というところの畑で休憩をしていた
その理由はナオが吐血をしていたからだ
(くっ!俺の回復魔法では少ししか効果がない…
骨折しているのか?)
音也が回復魔法をかけているが骨が折れているのか効果を示さない
音也もフェアリークロスで魔力を消費しているのだから回復魔法が効果があまりない理由としては明白ではある
下手に動かせばさらに悪化するだろう
アランがトランの方から走ってくる
僧侶を呼んできたようだった
「音也!僧侶を呼んできたぞ
この街1番の僧侶らしい!」
「ありがとう、これで治るかもしれない」
「これは重症ですな
ヒールでも完全には治りません
ですが、この町には医者もありますのでそちらも利用することを勧めます」
僧侶はそう言うとヒールをかけ始めたが外傷は治るも骨折などは治らない
とりあえず運んで行けるくらいには回復した
サーシャも重症だが外傷が多かったためほぼ完治したと言えるだろう
トランに入り、ナオとサーシャを医者へと送る
サーシャは外傷こそ酷かったが臓器や骨といった内側はほとんど傷ついていない
しかし、ナオは見立て通り骨折もしているし一部の臓器も少し傷ついている
「…俺がフェアリークロスに固執しなければこうはならなかったかもしれない
こうなったのは俺が時間稼ぎを頼んだからだ
覚悟はしていたが本当にこうなってしまうと辛いな…」
「でもあれしかベルーガを倒す手段は無かった
それに俺が包帯だけで済んだのはお前のおかげだぜ
あの時ナイフで弾いてくれなかったら俺は頭を潰されてやられちまってた
だから感謝してるぜ」
アランが笑顔でそう言うと音也の顔にも笑顔が戻っていた
そうしていると外から悲鳴が聞こえてくる
その声はどんどん大きくなっていく
音也たちが外に出るとそこには2体の魔物がいた
「邪魔だ!矮小な人間め!アルゼス教団の軍団が一つ、獣魔軍幹部ザレビアである!
勇者よ!出てこなければこの街の人間は皆殺しにするぞ!」
「そう血の気が多いと困りますなぁ
勇者様、私は賢将軍幹部・アムスです
早々に出てきていただけると誰も傷つかずに済むのですが」
ザレビアは巨大で3mは超えるような体躯で手に持ったモーニングスターを振り回している
アムスは小柄だが魔法が得意なようで地面は常に魔法陣が浮かび上がっている
音也は飛び出してしまった
もちろんアランも続く
「そこまで言われて黙ってるほど俺は優しくないぞ
「初っ端からフェアリークロスかよ!
まぁ、やつらがやべーことはこっちもわかるけどよぉ!」
音也は最初からフェアリークロスで戦うつもりだ
アランもブーメランを構え、戦闘態勢に入る
アムスはクロスを見ても表情一つ変えず言い放った
「ほう、これが噂のクロス
可能性の力ですか
ですが私たちには通用しません」
「試してみなければわからないだろう
ウインドバレッジ!」
1本の矢を空に放つと分散し無数の矢になる
その一本一本には風を纏っており刃のようにザレビアとアムスを切り裂く
と思われたその瞬間、音也に全て着弾していた
「音也!?いったい何が…」
アランは驚きを隠せなかった
それはそうだろう
ザレビアとアムスに当たったはずのウインドバレッジは全て跳ね返って音也の体に穴を開けているのだから
「このアムス、魔法の反射が得意でしてねぇ
それはクロスとてそれは例外ではありません
我ら軍団幹部は教祖・ベルーガ様には及びませんが得意なことが一つ一つ違う
つまり、我ら幹部が手を組めば…相性次第ではベルーガ様を超えることに他なりません」
アムスが解説をすると音也は再び詠唱を始める
「
ウインドカッター!」
音也は風を集めてカッター状にしてアムスに向かって三つ投げつける
一つは反射させられるが残りの二つは後方から迫る
当たったと思った次の瞬間には反射させられ音也の脇腹をかすめ血が出る
「後ろなら大丈夫と思っていたのですか
全方位に反射魔法をかけていますので」
「ならこいつを持ってきな!」
アランがアムスに向かってブーメランを投げる
しかし、ザレビアがモーニングスターで弾き返す
「なっ!くそっ!」
「少しは考えたな人間
だが、なぜこのザレビアがいるかを考えなかったのか?」
「くそっ!魔法物理において完璧な防御ってことかよ!」
アランが舌打ち混じりに言うとザレビアの背中に矢が刺さる
魔力も何もこもっていないサーシャの矢だ
「次から次へと敵!敵!敵!
ゆっくり休んでられないわよ!」
サーシャはザレビアに向かって矢を連射するも全く意に介していない
そして、アランから音也へと急激に方向転換をして音也の右腕に向かってモーニングスターを振り回す
すんでのところでナイフで防御するもナイフが折れてしまう
「くそっ!ナイフが!」
「人間ではよくやった方だな勇者よ
せめて苦しまないようにとどめを刺してやる」
ザレビアが音也にとどめを刺すために向かってくるもその時後ろから強大な気配を感じ、この場にいる全員がそちらを見てしまう
そこにはナオがいた
本来なら立つのも歩くのもやっとなはずなのにゆらりとこちらへ向かってくる
戦闘はまず無理だ
「ナオ!戻れ!
今のお前には戦闘は無理だ」
音也が必死に叫ぶもやはりゆらりと歩いてくる
「みんなごめん…
力を使う
しばらくお別れだ
ごめんね…
うおぉぉォォォォォォオ!」
ナオから黒い煙のようなオーラが溢れ出し、目は赤く輝いている
ザレビアへと向かって飛びかかり、噛み付いている
「オオオオオオ!
ガルルルル!」
「こいつめ!このチビが離せ!」
そして少し降りてナオはザレビアの腹に手を突き刺し掻きむしるように攻撃している
「馬鹿な…!ばかなぁァァ!
勇者の仲間にこん…なに強い奴がい…るなんて聞いてな…い
こ、のこの…ザレビア様がぁぁぁあ!」
「ご、めん
みん…な」
ナオはアムスに目もくれず、最後の一言を振り絞ってトランの町から逃げていった
ものすごいスピードで山岳地帯の方へと駈けていく
(ナオ、すまん!)
音也は心の中でナオに謝った
自分が弱いからこのようなことになってしまったと彼は再び自分を責めるだろう
そしてアムスはザレビアがやられたことに相当なショックを受けているようだった
そこに翼の音がする
それは音也たちの前に降りてきて…
「アルゼス教団・賢将軍の幹部アムス!
今ここで私が…このデモンジェネラル・カトレアが魔王・ガルシア様の命により貴様ら教団員をを倒す!」
第5話 魔獣の姿 End
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